Rabbit or Duck?

Chronicles of My Ambiguous Life

読書メモ19

 

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

 

 

イントロダクション

ダーツの実験

位置: 159
学習とはつまり理解のプロセスメソッド体系なのである。学習とは一つのことへの集中と計画性と内省をともなう活動であり、学習の方法がわかれば習得の度合いと効果は大きく上がる。

 究極のサバイバルツール

位置: 253
学習の目的はある事実や概念についての考え方を変化させることであり、学習にあたってめざすのは思考の体系を学ぶことなのだ。 

位置: 257
学習とは『整理されたわかりやすい体系の大切な部分を理解すること』と考えよう

 体系的アプローチ

位置: 339
もし知識を深める価値のあるスキル、つまり習熟する価値のあるスキルであれば、その専門知識を身につけるために体系的なアプローチをとる必要がある。次の手順だ。

位置: 341

  • 価値を見いだす:学びたいと思わなければ学ぶことはできない。
  • 目標を設定する:知識を習得する初期の段階においては、集中が重要だ。何を学びたいのかを厳密に見きわめて、目的と目標を設定しなければならない。
  • 能力を伸ばす:学習のこの段階では、スキルを磨き、パフォーマンスを向上させることに特化した手段を講じる必要がある。

  •  発展させる:この段階では、基本から踏み出して、知識を応用したい。

  •  関係づける:すべてがどう噛み合うかがわかるフェーズである。私たちは結局、個別の事実や手順だけを知りたいのではなく、その事実や手順が他の事実や手順とどう関わり合うかを知りたいのだ。

  •  再考する:学習には間違いや過信がつきものだから、自分の知識を見直し、自分の理解を振り返って、自分の学習したことから学ぶ必要がある。  

これらの段階すべてに通じるテーマ

位置: 353

学習とは頭を働かせる「活動」という面が強く、積極的に関与するほど学びも深まるということだ。 

位置: 356

同時に、学習を管理してほしい。フィードバックをもらっているだろうか。自分のパフォーマンスをベンチマークしているだろうか。 

位置: 360

自分の思考についても必ず思いを巡らすようにしよう。本当に理解しているか。どうしても避けられない「忘れること」について手を打っているだろうか。これについては、学習を分散させるのが大事

位置: 368

専門知識の習得プロセスには往々にして認知的な面ばかりでなく非認知的な面もある。例えば、「自分にはできる」と思わなければ学習はできない。

位置: 370
専門知識を習得するには、関係を見いだす必要もある。効果的な学習とは要するに知識の総体の中の相互関係をつかむことだ。 

 第一章 価値を見いだす

位置: 412
何であれスキルを習得するうえで、モチベーションは最初の一歩である。


意味を自ら発見する

位置: 471
報酬、目新しさ、背景情報──個人的に意味があるという感覚を創り出す際にはいずれも効果がある。そう考えると、自発的なモチベーション──生来の関心──はそれ自体が一種の価値だ。私たちが何かをするのはそれをしたいからだ。だが、ある対象について学ぶ意欲を持つには、その対象が自分に関連性があると思わなければならない 

位置: 484
人はこう感じるべき、こう考えるべきと指示されると、脅されているとか過剰に管理されていると感じかねないからだ。

 それよりも、活動の意味を自分で見つける必要がある。つまり、価値は人から発して対象物に、個人から発して知識やスキルに反映されるものでなければならない。 

学びを自ら「作り上げる」

位置: 551
「意味」が充足感の最大の原動力に挙げられることがわかった。人は自分の人生に、幸福感や利益以上に価値を求めており、「高い意義を感じている」と申告する人のほうが不安感が少なく、健康で、人生への満足度が高い。

位置: 565
つまりは学びたい対象を自分といっそう関連性の深いものにするということだ。それは習得したいスキルに意味を──そしてモチベーションを──見出す手段となる。 

位置: 576
ラーン・クラフティング、いうなれば課せられた知識の習得に意味を探す作業だ。具体的には、自分に次のような問いかけをする。この学ぶ対象は私にとってどう価値があるのか? どうすればもっと自分に関連性があるようにできるか? この知識を自分の生活にどう利用できるか? 

位置: 604
知識は分割すると最も効率よく学べる。ただし関与の深さ、モチベーションを維持するためには、選択の余地もほしい。

位置: 607
知識の習得には、自分の欲求を深く掘り下げる必要がある。

探索する種

位置: 624
新規性のあるものを探す体験をすると、快感を与えるドーパミンの分泌レベルが急上昇する。

位置: 672
学習の難易度が上がったら感情面の支援が必要になることも知っておきたい。やりとげるためには探求システムをうまく管理する必要がある。私自身はモチベーションを火ととらえるようになった。燃え上がらせるには情動の火花が必要だが、管理しなければたちまち消えるか、燃えすぎて手に負えなくなる。つまり探求心が足りなかったり、ときめきが足りなかったりすると、知りたいという欲求はなくなる。

 

「知的努力には伝染性がある」

位置: 763
(ティングリン・クレモンズは生徒たちと)親しいつながりを作り、個人的な指導を心がけている。生徒たちに「メンターを見つけなさい」とアドバイスもしている。

位置: 765
生徒たちには帰属意識を持ってほしいのだと熱く語った。そういう社会的絆が結局は生徒の学習へのモチベーションを維持する。

  

意味とは学ぶこと 

位置: 771
価値を探すべき理由はもう一つある──私たちが学ぶ理由が実はそこにあるのだ。私たちがスキルや知識を獲得するのは経験したことを理解するため、自分を取り巻く世界に説明をつけるためである。

位置: 792
脳はよくコンピュータにたとえられるが、実はこれは正しくない。その発想でいくと、まず単純にハードドライブの容量を増やせば頭が良くなりそうだ。また、脳が受動的に情報を受け入れるだけということになる。

位置: 794
それよりも、脳は一般道や高速道路の集合体とか街路と有料高速道からなる道路体系のようなものと考えたほうが実態に近い。道路の喩えでいうと、簡素な一本道──例えば未舗装の土の道──を通すのは実に簡単だ。愚直に行き来を繰り返せばよい。学習も同じだ。基本的な概念やスキルはだいたい習得しやすい。

位置: 810
「情報に意味を込めて考えれば、意味のない表面的なレベルで考えるよりもはるかに記憶しやすいのです」 

位置: 863
彼は他人について「失敗した」という言い方をしない。「理想には少し届かなかった」と言う。

位置: 869
まず、情報を選択しなければならない。ソビエトの歴史とか仏教哲学という具合に、学ぶ対象を絞り込む

位置: 870
次に、今ある知識と学びたい情報の結びつきを頭の中に作ることによって、その情報を自分の知識に統合しなければならない。

位置: 879
能動的な学習アプローチの利点はもっと難しい認知タスクにも通用する。例えば読書を考えてみよう。読んでいることを頭の中にイメージとして思い描けば──文章を頭の中に描き出せば──記憶に残りやすい。 

位置: 887

(学習を頭を働かせる「活動」ととらえる研究によって)
蛍光ペンでなぞるやり方は学習にあまり効果がないとわかった。なぜか。マーカーを引くのは人が知識を構築するのに十分な行動ではない、ということらしい。同様に、ダンロスキーらによれば繰り返し読む効果も限定的だ。なぜか。これもやはり頭を働かせる「活動」を促すには至らないからだ。

位置: 891
自分で自分に問題を出したり、自分に説明してみたりするような、能動的な学習活動が最も効果が高いと話してくれた。

言語の摩滅

位置: 959
能動的な学習が効果を上げるのは、頭をフル回転させて考えているとき、それも専門知識について頭を使っているときだという。

マインドセットの大切さ

位置: 1,005
学習にはマインドフルネス、つまり積極的な価値の探求が必要だと話してくれた。

位置: 1,006
このような思考態度、視点は、単に注意を向けることではない。その体験の新しさを強く意識する形で体験に関与する必要がある。脳の「自動操縦」モードをスイッチオフにして、能動的に専門知識を探求しなければならないのだと彼女は言った。  このマインドフルネスはさまざまな点でコンテキストに帰着する。

位置: 1,016
専門知識の範囲を限定せずに考えたほうが意識の質が上がるという。課題を別の視点から眺めるのもよい。視点を変えると学びが豊かになるのは、その専門分野内の細かい部分に意識を合わせやすくなるからだ。

位置: 1,018
脳の自動操縦状態を解除するいちばんの方法は意味を探すことだ。

位置: 1,034
スキルを習得しようとしているときはニュアンスに注意すること。学習するためには、専門分野に元からあったものは何か、新しいものは何かを能動的に追わなければならない。つまり、違いを探すことで理解が得られる。「新しいものに気づく、というのがマインドフルネスの定義なのよ」 

MET(Measures of Effective Teaching[効果的な教育の指標])研究

位置: 1,053
現実的に言えば、学習には指示が必要である。

位置: 1,054
指導と支援が必要なのだ。メンターやトレーナーやインストラクターが果たす役割はいずれも非常に大きい。本書では繰り返しこの考え方を取り上げる。

位置: 1,074
教育に関して学生の成果を高める大きな要因は二つあった。一つめは、研究者が「 勉強圧力」と呼ぶ、教師が学生に対して勉学に励むよう発破をかける度合いだ。教育者が学生のがんばりや教材への真剣な取り組みをどれだけ後押しするか、である。

位置: 1,077
二つめの要因は「 勉強支援」、すなわち教師が学生にモチベーションを感じさせる度合いである。この第二の要因は学生が自分との関連性を感じられるかどうか、学生と教師の間の個人的つながりの感覚がポイントだ。

位置: 1,080
高い成果を上げる教師は学生に学業への関与を促し、対象の意味を理解するよう努力させる。つまり、優秀な教育者は学生を、頭を働かせる「活動」としての学習に深く関与させるのである。また、優秀な教師はモチベーションと支援を与える。学生が学習に意味を見いだす手助けをし、自主性と自分に関連性があるという感覚を与える。  

第二章 目標を決める

位置: 1,111
ディロン中学校は底辺校からの脱出をなしとげた。その原動力の一つが「サクセス・フォー・オール」という教育改革の取り組みである。 

位置: 1,131
「サクセス・フォー・オール」は目標を高く設定していた。このプログラムの成功の秘訣は当時も今も変わらず、目標設定にある。

位置: 1,135
つまり「サクセス・フォー・オール」の成功の要因は、学習は偶然にできるものではない、とごく単純明快に考えたところにある。

位置: 1,138
知識を習得するにはその知識の習得に特化した方法が必要なのだ。 

位置: 1,143
何も考えずに学習してはいけないということである。創造性と発見はやはり重要だ。深い理解を生み出す機会も重要だ。だが学習の入り口の段階では、プロセスをしっかり管理する必要がある。 

位置: 1,145
すなわち目標設定、計画策定、前提となるスキルの習得、習得したい専門知識の絞り込みを行うということ

位置: 1,147
本章ではこの考え方を詳しく取り上げ、スキルの習得をめざす人にとって重要な二つの問題をじっくり見ていく。何を学習するか、学習するにはどのような計画を立てるべきか、の二点だ。 

位置: 1,172
学習にこのような社会的、感情的な要素があるからこそなおさら、目標を明確に設定したアプローチが必要になる。「学習は場当たり的にできるものではありません」と彼は私に話してくれた。「学習を進めながら計画を変更するのはかまわないが、計画は絶対に必要です」


短期記憶の容量の小ささ

位置: 1,222
心配事が知識の習得の大きな障害となりうるのも、短期記憶の容量が限られているためだ。恐れていることや不安なことがあってストレスを感じていると、集中できない。

位置: 1,243
有能な教師は習得しやすい量に小分けして、学生に一口サイズで知識を与える。もっと正確に言うと、優れた教師は認知力の容量をよくわかっていて、すんなりと理解できるような教え方をするのである。

 知識は学習の土台

位置: 1,278
先生に一対一で目をかけられれば、フィードバックがたくさんもらえる。生徒の動機づけもしやすい。生徒が何に意味を感じるかが先生にわかるからだ。 

位置: 1,288
個人指導に効果があるのは、生徒がわかっていることを土台にするからだ。先生は私たちがすでに理解していることに合わせて情報をくれる。イントロダクションでこれを「 知識効果」と呼んだ。要するに、対象についてまったく知識がないと学習は難しいのである。

位置: 1,324
個々人にとっては、専門知識の習得にはどのような前提知識が必要かを明確に見きわめるのがスタート地点となる。 

学習にコンフォートゾーンはない

位置: 1,369
学びの効果が最も高いのはまだ理解していないものの中で最もやさしい題材を学ぶときである。

思考の質を上げる

位置: 1,415
学習を始めたばかりの人への大事な教訓はまず、専門知識がどのように体系立っているのかを知るために、学習の対象領域に通底する論理の理解をめざそうということだ。

位置: 1,416
その一つの手法は、あるテーマについて新しく学ぶ前に、そのテーマについて知っていることを書き出すというものだ。

位置: 1,426
自分自身で行う小テストも、専門知識を体系化するうえで同じくらい重要だ。

位置: 1,449
知識習得とは内容を覚えるだけの話ではないということだ。専門知識は単なる事実情報の蓄積ではない。何かを本当に知るためには、思考のスキルも獲得しなければならない。

思考についての思考―そして情動

位置: 1,544
スペシャリストがある課題に取り組むときには、問題をどのような視点からとらえるかをじっくり考える。自分の答えに筋が通っているかどうかに感覚を研ぎすませる。どうやって答えにたどりついたかを内省する。

位置: 1,549
学習にまつわる最大の問題の一つが、メタ認知の不十分さだ。私たちは知らないことを理解するために最善を尽くしていない。

位置: 1,551
メタ認知とは結局、自分に投げかけるいくつかの問いにほかならない。自分がわかっていることはどうしたらわかるのか。あやふやなのはどの点か。理解度を測る手段はあるか。このような問いには大きな効果がある。学習に関しては、メタ認知はしばしば地頭の良さより重要だ。

感情管理の必要性

自己効力感

位置: 1,654
イメージトレーニングの効果は脳と身体が情報を双方向にやりとりする性質のおかげだ。イメージトレーニングがこれだけ劇的な効果を生み出せる理由は、身体と心の深い結びつきにある。

位置: 1,656
イメージトレーニングのおかげで、テイラーは自己効力感を獲得した。これは自分の能力への信頼感、きっとうまくいくという気持ちであり、学習に際しての情動の気まぐれに対処するうえで非常に重要だ。

位置: 1,663
ある活動をやりとげられるとわかっていると、その活動にはるかに身が入ることにバンデューラは気づいた。 

位置: 1,673
自己効力感は学習につきもののフラストレーションに対する緩衝材の役目を果たす。これから達成するものがわかっていれば、挫折や気を散らすもの、傷ついた感情への対処力も、学習に必要な一心不乱の集中力も上がる。 

位置: 1,676
人は学習するとき、「自分は十分にやれているか」、「失敗するのではないか」、「間違っていたらどうしよう」、「もっと他にやるべきことがあるのではないか」など、つきまとってくるさまざまな感情への対抗手段を必要とするという。バンデューラによれば、こうした思考や情動は知識習得能力をたちまち奪う。短期記憶の妨げになるからだ。 

位置: 1,690
一方、気持ちのモチベーションを維持する必要もある。これに関しては、自分への語りかけが重要だ。その際、黒か白かの両極端な思考は避けなければならない。だから「私は全然だめだ」と自分に語りかけるのではなく、「私は悪戦苦闘しているところだ」と語りかけよう。また、少しでも前進したら見逃さず、どんなに小さな成果でも「今日は三時間やった」などと自分を褒めよう。 

位置: 1,707
学習とは「心の目で成功を実感すること」である。 

学習は難しくて当たり前

位置: 1,736
ソンのアプローチの根底にあるのは学習とは頭を働かせる「活動」であるとする考えで、ソンは自分の研究室でも同様の効果をまのあたりにしていた。認知能力を活用するほど、得るものは大きい。

位置: 1,744
長期的な学習力を最大化するためには、自力で学ぶ必要があるんです

位置: 1,771
学習は難しいものと知っておかなければならない。さらには周囲の人にも信じてもらわなければならない。学習の苦労と困難を乗り越えるには社会的支援が必要だ。 

位置: 1,782
学習する際、私たちは社会的支援と社会的重圧の間でバランスを取らなくてはならない。 

位置: 1,818
人は学べるという実感がなければ学べない。

位置: 1,819
学習には自分がこれから何を学ぶか、今どれだけ学べているかを認識することが大事だ。学ぶ準備はできているか? 自分が知っていることをわかっているか? 学び足りていないことが何かわかっているか? 次に学ぶことは何か? このような目標を絞り込んだ、メタ認知的な焦点の当て方が、新しい分野で知識を習得しようとするときの要である。テーマについてあまり知識がない人には体系立った教育のほうが適している。

位置: 1,824
専門性が高まれば、新規性のある、非構造化問題で知識とスキルを実践したくなる。


第三章 能力を伸ばす

位置: 1,889
初心者はすべからく自分が伸ばすべき能力がわかるというメタ認知力が欠けている。それが初心者たるゆえんだ。

位置: 1,897
スキルを伸ばすには評価も重要だ。目標を絞り込んだフィードバックが必要となる。

 位置: 1,911
サミュエルズはよく言った。「ささいなことが肝心なんだ」


モニタリング

位置: 1,925
モニタリングとは要するに気づきの一形態であるという。結果を記録するためには何が起きているかに気づかざるをえない。

位置: 1,960
それでも、このように意識の焦点を絞ると成果は向上する。パフォーマンスの観察をまめに行うとほぼ何でも上達する。

 

外部からのフィードバック

位置: 1,980
実はモニタリングよりも効果の高いフィードバック法がある。それは外部からのフィードバックだ。 

位置: 1,989
その大きな理由は、自分のミスにはなかなか気づきにくいことである。モニタリングしていてさえ、ミスのすべては発見できない。これが学習の本質、知識の本質であり、ここでもまた「教育者の価値」を思い知らされる。的を絞ったフィードバック、外部からの判断をしてくれる他者が必要なのだ。 

位置: 2,001
もちろん、フィードバックにも問題点はある。行き過ぎる場合があるのはもちろん、良いフィードバックでも具体的に何をすべきかまでは教えてくれない。学習は自分で創り出していかなければならないからだ。総じて役に立つフィードバックは指針を与えてくれる。能力を伸ばす方向づけをしてくれるのである。 

位置: 2,008
良いフィードバックは、気づきとともに正しい結果を生み出すための体系的な方法を与えてくれる。 

位置: 2,012
体系立ったフィードバックが学習プロセスの初期には重要で、配慮の行き届いた批評と指導は初心者にきわめて大きな影響を与える可能性がある。

位置: 2,035
フィードバックと学習プロセスに関して、もう一つ大事なポイントがある。人は説明を必要とすることだ。学習するためにはなぜ自分が間違っているのかを理解し、自分の考え方へのフィードバックをもらう必要がある。

 位置: 2,070
ハッティによれば、フィードバックの効用は正しい情報を得ることだけではない(もちろんそれもおおいに役立つだろうが)。ハッティをはじめとする専門家は、フィードバックが最大の効果を上げたと言えるのは、学習者が新しい推論法を獲得したとき、あるテーマについての考え方が変化したときだと主張している。

位置: 2,076
良いフィードバックには必ず「先行予測」の要素が含まれているという。つまり学習で次にどこに進めばよいか、見当をつけさせてくれるのだ。

苦労の本質と反復

位置: 2,086
スキルの伸びがフィードバックから始まるとすれば、次に向かう先には苦労が待ち受けている。人は必ず失敗する。フィードバックとは自分の間違いを知ることに尽きる。

 位置: 2,106
専門分野を身につけるには反復が必要だということだ。専門分野の力を伸ばすためには、その専門分野に何度も、できれば何通りもの方法で取り組む必要がある。

位置: 2,127
つまり学習のコンフォートゾーンは常に変化し、少しずつ難しくなり、レベルが上がらなければならない。学習が毎回苦労をともなうものとなるようでなければならないのだ。

 「検索練習」

位置: 2,149
彼はたえず自分に質問を出して、さまざまな単語を思い出せるかどうか確認する。信号待ちしているときや自分の研究室で人を待っているとき、彼は自分がすでに学んだこと、これから学びたいことについて自分に質問している。 

位置: 2,156
学習学の世界では、検索練習はテスト効果とも呼ばれる。

 脳の可塑性

位置: 2,214
脳はどうやら知的な苦労に対処しようとするときに白質を作るらしい。自分が知っていることとできることの間に大きなギャップがあると、脳はそれに対処しようと構造を変化させる。

位置: 2,216
ドイツの研究者グループがなぜそのようなことが起きるかについて新しい解釈を唱えた。「需要」が脳の「供給」をオーバーしたときに新しい神経構造が創り出されるのだという。

間違いの心理

位置:2,277

間違いは思考の本質である。間違いは概念形成の核心だ。学び、専門知識を育てる際に間違いをおかすのは、それが理解するために必要だからだ。

位置: 2,321
人が間違いや挫折、損失や失望の情動的な側面と付き合う手だてを必要としているのは明らかだ。心のレジリエンスのようなものが必要なのだ。その点で、学習のプロセスは情動コントロールのプロセスとも言える。

位置: 2,341
ミシェルは「if/then〔こうだったらああする〕」プランも推奨している。「勉強はあとでやろう」と考えるのではなく、「今勉強したら後で出かけられる」と考えるのである。明確なルールを決めておくと、情動の管理がしやすくなる

位置: 2,345
(習慣化させることの)目的は「努力の要る自制から努力を抜く」ことである。

位置: 2,368
マインドセットについて)間違いに対する思考態度は社会的に形作られる面があり、メンターやリーダーや親からのささいな言葉が「生まれ派」が「育ち派」に変わるきっかけになると語った。

位置: 2,375
親が失敗を「生まれ派」のように能力が足りないせいだと言うか。それとも「育ち派」のように学ぶチャンスだと語るか。親が後者の対応をすれば、子どもは「育ち派」になる可能性が高い。つまり、親が失敗で成長できると行動で示せば、子どももその考えを信じる可能性が高くなる。

位置: 2,378
自分一人の努力においては、やはり自分に語りかける言葉が鍵を握る。ドゥエックは心の中の会話を変えるとよいと言う。ミスにわずらわされず、成長に目を向けよう、失敗や間違いはスキルや知識を獲得するチャンスととらえよう、と自分に語りかけるのだ。 

位置: 2,383
はスキル獲得には困難がともなうとあらかじめ予想しておくとよい、と言う。ミスや苦労をしても、ダックワースのように「これがふつうだ」と思えばよいのである。

位置: 2,389
褒めるときには具体的に成果と結びつけて褒めるべきだとドゥエックは言う。「練習が報われたね」、「よくがんばったね、すごく進歩したよ」という具合だ。 

位置: 2,391
最も大切なのは成長を信じることである。 

 
第四章 発展させる

位置: 2,550
学習とは知識の発展、専門知識の領域の拡大とも言える。学習プロセスのこの段階においては、理解を深化させなければならない。 

位置: 2,561
最も大事な概念を要約することによって、その概念への理解が深まり、その概念に意味が生まれる。この行為は成果に明確なプラスの効果をもたらすことがわかっている。 


マイルス・デイヴィスの傑作

位置:2602

知識領域を広げることは知識領域を説明できることに非常に近い。学びながら説明を求める質問を自分に問いかけると習得の度合いが高まることが、様々な研究で証明されている。具体的には「この概念を説明できるか?」、「このスキルを開設できるか?」「自分の言葉で言えるか?」などだ。

学習の発展としての議論

位置:2,659

議論はある分野内の物事のつながりを豊かにしてくれる。習熟した領域についてとことん考えさせることのよって、専門知識を強化してくれる。

位置: 2,680
面接では実際の仕事ぶりはほとんど予測できないことが示されている。候補者がそのポジションをこなせるかどうかを判断するには、紹介状や経歴や筆記試験などの確実なデータのほうがずっと重要である。

応用の必要性

位置: 2,697
学習は具体的であるほど理解しやすい。学習プロセスに関して言えば、すでに知っていることを、これから知りたいことの理解を助けるために応用できるのである。 

位置: 2,742
学習は全身で行うものだということだ。情動、感情、触覚に至るまですべてが知識を支えている。学習とはまさに文字通り「活動」なのであり、対象のテーマやスキルに体で関与すれば学びはさらに豊かになる。

「ハイテック・ハイ」

位置: 2,783
学習を発展させるとき──知識を応用するとき──学習は統合されていく。専門知識がより豊かな知識体系の一部になるのだ。知識を応用すると、そのテーマを全体の一部として理解することができる。 

位置: 2,789
分析とは、科学(予想する) と技術(たくさんの定石がある) の混合であるのがわかるはずだ。

位置: 2,811
シミュレーションに効果があるのは知識を応用する手段となるからである。アイデアや概念をより総合的な形でなぞってみるのを助けてくれるのだ。

人に教えるという学習方法

位置: 2,834
研究者の世界では「プロテジェ効果」と呼ばれるが、これも実は知識応用の一形態である。あるテーマについて人に教えることで、私たちはその概念に自分なりの解釈を加える。そのテーマの何が重要かを明確にし、自分の言葉に直すことによって、専門知識を深めるのである。

位置: 2,846
教えることのもう一つ大事な点は、教えるという行為の社会性である。教えるとは情動に訴える活動だ。人に教えるとき、私たちは価値や意味、情熱や喜びについて考える。 

 不確実性の価値 

位置: 2,895
知識領域の拡大にはある種の創造性が求められるのだ。はっきりと定義されないものや不確実性を受け入れる感性が必要である。実際に、専門知識の領域を不確定であいまいな、発見や探求の余地があるものだと考えている人ほどよく学べるという研究結果もある。 

位置: 2,929
加えて、人が様々な違いに敏感になるには多少の後押しが必要だとも言う。例えばランコの研究室で行った実験では、被験者はもっと型にとらわれない学習をするように言われると、もっと型にとらわれない学習をするようになる。「『あなた独自のアイデアを考えなさい』と言うだけで変わることが多いのです」とランコは言う。

位置: 2,945
心理学者のキース・ソーヤーはこのアプローチについてわかりやすい考え方を持っている。微妙な差異を見つけ出すには、問題を「引き伸ばし」たり、「圧縮し」たりすべきだという。引き伸ばすとは問題を抽象化すること。そうすると解決しやすくなる。問題を圧縮するとは具体化すること。そうすると別の洞察が得られやすい。

「多様性は人を賢くする」

位置: 2,995
「外見が自分と異なる人々が周囲にいると、他人の行動の合理性を無批判に信じなくなります」

位置: 2,997
民族的な多様性は懐疑心をもたらすことによってクリティカル・シンキングを促す。 

疑問の大切さ

位置: 3,054
人は確実性を好む。確実性には着慣れたコートのような安心感がある。一定の事実情報を学ぶほうが簡単だ。ノウハウなら受け入れやすい。「答えだけ教えてください」とつい言いたくなる。 

位置: 3,068
つながりを作るために「なぜ」を問う質問をたくさんしよう。学ぶ対象を五感でしっかりつかみ、その複雑さを味わうために、知識は必ず応用しよう。知識を本当に自分のものにするために、人に教えてみよう。また、議論を恐れてはいけない──推論の力を伸ばすことによって学びはさらに豊かになる。


第五章 関係づける

位置: 3,101
本章では、ある専門分野内の関係性を探すことによって学びを得る方法に迫る。


システム思考

位置: 3,120
概念の構築や問題解決や批判的思考の実践には、専門知識分野の中のパターンを理解しなければならないと論じている。

位置: 3,132
学習効果を上げるには関係性を考える、これに尽きます」

 「最大の認知上の障害」

位置: 3,216
表面的な特徴をさまざまに変えた多種多様な復元抽出問題に取り組むと、核にある概念を理解しやすくなる。深部にある体系についてよく理解できるようになるのだ。

位置: 3,226
練習には変化をつけ、反復を避けるべきだ。「いちばん良くないのは同じ練習を複数回、連続して行うことです。これは絶対に避けなければなりません」。心理学者のネイト・コーネルは私にそう話してくれた。「長時間の練習はかまいませんが、繰り返しはいけません」 

位置: 3,239
複合的な学習の利点はある体験の直後に別の体験をするところにある。だから新雪の斜面を滑ったすぐ後に凍結した斜面を滑るべきだ。 

仮定思考

位置: 3,268
思考実験は仮定とそれほど違わないものである。

位置: 3,278
難しい問題に取り組むときには自分自身に「もし~だったら」という問いかけをしよう。もしもっと時間があったらどうなるか? もしもっと人員がいればどうなるか? もしもっとリソースがあればどうなるか? 答えがしばしば発想を刺激してくれ、問題がどのように体系の一部に組み込まれているかに気づかせてくれる。 

 ハッキング

位置: 3,334
学習プロセスにおいて関係づけの段階では、徹底した実験が、専門知識分野の根底にある体系を理解する方法として効果的だ。 

位置: 3,338
ハッキングの鉄則は「作る、テストする、デバッグする、変更点を文書に残す」だ。

視覚的アプローチ

アナロジーの価値

位置: 3,510
何かを理解するためにアナロジーを使う際は、二つの事物ないし概念の類似性が的確にわかるように見せなければならない。腫瘍の問題で言えば、類似した二つのものを並べるのは無理でも連続して示すと問題が解けやすくなる

位置: 3,528
アナロジーはカテゴリーの理解に役立つのである。アナロジーのおかげで私たちは集合について考え、何が集合を構成しているかを考える。 

位置: 3,597
どんな概念もその中心には比較があり、比較から論理が形成される。認知科学者のダグラス・ホフスタッターが述べているように、アナロジーは「思考の燃料と火」の役割を果たすのである。

位置: 3,601
過度な一般化はよくある誤りで、弱いアナロジーを過剰に適用したケースである。

問題解決のスキル

位置: 3,620
問題解決のスキルが重要な理由は二つある。第一は問題解決そのものの重要性で、私たちは課題を解決するために学習してスキルを身につけることが多い。第二に、関連づけのできた専門知識があれば、問題解決力は上がる。体系を理解していれば、さまざまな文脈で知識を活用できる。問題解決とはとどのつまりアナロジーを利用した推論の一種と言えるのだ。

位置: 3,640
診断とは要するにつながりを探すこと、すなわちパターン認識だ。「診断とは往々にしてマッチング行為なのです」と彼は言う。 

位置: 3,676
問題解決は学習とよく似ていて、これもまたプロセス、メソッド、アプローチである。 

位置: 3,684
ポリアは問題解決法に関心を向けた。あらゆる問題に対する「解決の動機と手順」を明文化しようと志し、ついに四段階に分かれた体系的なアプローチを提案した。

  • 第一段階:「 問題を理解すること」。この段階では、問題の核心や本質の発見に努めなければならない。「問題を理解しなければならない。未知のものは何か? どんなデータがあるか?」
  • 第二段階:「 計画を立てること」。ここでは問題に対する取り組み方を計画する。「データと未知のもののつながりを探せ」
  • 第三段階:「 計画を実行すること」。行動し、検討する段階である。「計画が正しいと証明できるか?」
  • 第四段階:「 振り返ること」。つまり解決法から学ぶこと。「結果および結果に至った道筋を見直すことにより、自分の知識を強化して問題解決能力を伸ばすことができる」

位置: 3,718

問題解決には他にも重要な技法がある。自分自身に問いかけを行う人のほうがそうしない人よりも問題解決力が高いと示唆する研究結果が出ている。

位置: 3,722
優先順位づけも重要だ。 


第六章 再考する

位置: 3,756
過信は効果的な学習をおおいに阻害する。自分を過信していると、人は勉強しない。練習しない。自分に問いかけを行わない。過信はとりわけ、知力を鍛えるタイプの学習に取り組む邪魔をする。


過信

位置: 3,794
私たちは実際よりも自分がよく知っていると思い込みやすいのである。 

位置: 3,801
このような過大評価にはそれなりのメリットがある。多少の過信がなければ、本を書いたり研究成果を発表したりする人は誰もいなくなるだろう。自信はモチベーションにもつながる。例えば入試面接で自分のGPAを実際より高く申告した大学生は、正直に申告した学生より入学後の成績が向上した。

位置: 3,808
学習 で起こる過信の一つの要因は慣れだ。

位置: 3,824
あまりに簡単に学んだテーマは、忘れるのもまた簡単

位置: 3,825
TEDトークのきわめて洗練されたアプローチについてはどうか。動画が巧みな手法で製作されているのがそんなに問題だろうか。ところが皮肉にも、動画の出来の良さがかえって学習の妨げとなるのだ。これを学習の「二重の呪い」と呼ぶ心理学者もいる。つまり自分がわかっているかどうかがわからないとしたら、わかっていない場合もそれがわからないわけで、当然ながら簡単に見えるものを人は勉強しようとしない。単純でわかりやすく見えるものに対して、人はあまり努力しない。

位置: 3,830
学習における過信の第二の重要な要因、すなわち過去の実績である。以前に体験したことは学習の判断に影響を与えがちだ。化学のテストで常に優秀な成績をおさめていたら、たとえ次の試験が前の試験よりずっと難しいかもしれなくても、試験勉強をしない可能性が高い。 

直感型思考と熟慮型思考

評価する必要性

位置: 3,933
特定のスキルを身につける際、私たちは自分自身に次の問いかけをしなければならない。「よくわからないと思えるところはないか? 不明な点はどこか? 自分がわかっていることはどうすればわかるか?」

位置: 3,935
カーネギーメロン大学のマーシャ・ラヴェット教授は講義の後で学生に一問か二問の課題を与えることがよくある。この質問をラヴェットは「仕上げ」と呼んでいる。授業の一環として、学生に「自分は何を学んだか? 理解しづらかったのはどこか? わからないと思えるのはどこか?」と自問させるのである。

位置: 3,940
ラヴェットが推奨するのは最も学習しづらい部分に学生の意識を向けさせることだ。ラヴェットの言う「いちばん手こずるポイント」に意識を集中することで、学生が学習から得るものは大きくなる。「『自分はどれだけこれがわかっているだろう?』『わからないと感じるところはどこだろう?』と考える思考習慣を身につけるということなのです」

位置: 3,963
専門知識の習得は意識的に行わないと発展しないことは、えてして忘れやすい。私たちはみな自問しなければならない。「自分はどうやってわかったのか? 何をわかっているのか? 知っていることを確認したか?」

 

自分に分かっていないことを知る

位置: 4,000
専門家であっても自分がわかっていること、わかっていないことをつぶさに見直すといっそう学びを得られるのである。フィードバックと同様、このような評価もすぐに行わなければならない。

位置: 4,004
評価の種類にはもう一つ、小テストがある。これも自分がわかっているかどうかを知る手段となる。心理学者のリーガン・グルンのような学習の専門家は学生にたえず「自己テストをしなさい、教科書の巻末にある質問に答えなさい、模擬試験を受けなさい、できるだけ小テストする機会を持ちなさい」と呼びかけ、この事実を意識させている。グルンによれば効果はすぐに現れる。 

分散学習

位置: 4,057
学習の間隔をコントロールすることによる効果は非常に大きく、成果の向上が明らかに期待できるので、分散効果が発表された直後から、心理学者らは教育者に活用を促してきた」

位置: 4,109
世間一般では集中学習があいかわらず幅を利かせている。分散アプローチは普及しておらず、程度の差はあれ人は詰め込み式の学習をしている。 

 内省の必要性

位置: 4,165
一般論として人は直感に従いたがるのだ。サッカーのゴールキーパーと同様に、人はいつまでも煮えきらない、優柔不断である、考えすぎると思われるのをよしとしない。しかし逆の事実を示すエビデンスが多数ある。たいていはテストの答えを修正したほうが得点が高くなる。もう一度答えを考え抜くと、総じて成果は向上する。 

位置: 4,168
熟慮は学習に欠かせないことがわかっている。何であれスキルや知識を理解するためには、そのスキルや知識について内省しなければならない。

位置: 4,170
その経験について考え抜くということだ。

位置: 4,180
内省を書きとめるのは気まぐれでやっていることではない。書くという行為は思考を減速させ、熟考を促す。学習の質を上げる

位置: 4,192
内省とは自然にできるもので、学ぶ対象を目の前に置けばそれを学びに変えることができる、と人々は素朴に考えがちだとアンブローズは語った。「大学の教育課程でよくありますよね」とアンブローズは言った。「教員は自分の専門に思い入れがありますから、学生にできるかぎり多くの教材を与えます」  

 しかし学習はそれではうまくいかない。人にはスキルや知識について、集中して考え抜く時間が要る。アンブローズが話してくれたように、「知識を得れば得るほど、それらにつながりを作る必要が出てきます。それを意識的に行う必要があるのです」。  

静かな時間

位置: 4,206
内省には心静かな時間が必要だ。無言で書き物をしたり、シャワーを浴びながら考え事をしたりすることはあるだろう。だが集中した熟考に取り組むためには頭の中を落ち着いた状態にすること、静かな内省の時間が必要になる。

位置: 4,212
内省には自分の学びについて再考する機会以上の効果がある。熟考そのものにも教育効果があるのだ。この観点からは睡眠も興味深い例で、私たちは睡眠のおかげで自分の思考を理解することがわかっている。

位置: 4,223
頭の中に感情があふれているときは物事に取り組めない。熟考ができない。たしかに、いざという大事な場面で、電話番号のような基本的な情報を覚えることはできるかもしれない。

位置: 4,235
「学生には内面に分け入って一種の内省ができる時間と機会とスキルと励ましが必要です」

位置: 4,243
内省的な活動はメタ認知にも非常に役立つ。静かなひとときを過ごした後は思考について思いを巡らすことがうまくできるようになる。短時間の休息でもメタ認知スキルは向上する。

 「こぶし」実験

位置: 4,276
サラ・ヘラーら研究者が指摘するように、「こぶし」実験にはBAMプログラムの目的が集約されている。その目的とは、立ち止まって考えれば、人は自分の求めるものをもっと手に入れやすくなると伝えることだ。BAMで「 ゆっくり考える」という名称で広く知られるこの考え方はまさにイモーディノ=ヤンの研究の実践と言える。熟考を覚え、情動を抑制し、心を穏やかにすることで、人はもっと上手に意思決定をし、より多くを学べる。 

位置: 4,301
「行動をよしとする先入観は学習には有害である」というのが研究者らの結論だった。

位置: 4,302
スロー・シンキングに取り組むのはそう難しいことではない。かなりの集中力を要する学習タスクに取り組む前には、まず不安を追いやる工夫をすべきだ。BAMプログラムにいくつか有効なアドバイスがあるが、例えば呼吸を数えるだけでもよい。

位置: 4,305
瞑想も考えてみてほしい。瞑想も思考を減速するのに役立つ。瞑想の熱心なファンは意外な人物も含め、いまや大勢いる。 

位置: 4,310
一人になる時間も有効だ。一人で過ごすことによって思考の速度が抑えられるので、さまざまな角度から熟慮したり、推論能力を研ぎすませたり、ただひたすら自分の思考について考えることができる。

位置: 4,313
どのアプローチを取るにしても、重要なのは時間だ。内省的な思考に取り組むためには、考えたり、書いたり、ただ思いを巡らせたりするための邪魔の入らない長い時間が必要である

無限のプロセス

位置: 4,327
再考は学習プロセスの核心であり、この考え方は次第に現代の世の中に広まりつつある。専門知識はたえず進化していく。スキルも一度習得すれば終わりというものではなくなった。

位置: 4,344
携帯電話は「あるだけで」集中力を減退させることがわかっている。

位置: 4,348
概念やスキルはシンプルな形で取り組んだほうが成果は高いことを多数の実験が実証している。

位置: 4,363
テクノロジーの利用に関する最後の要点は、学びを求めよ、意味を見いだせ、ということだ。常にスキルおよび知識の開発と内省をめざしてほしい。

位置: 4,371
自分を一新させなければならない。その努力に終わりがあると思ってはならない」


エピローグ

位置: 4,442
目標設定が知覚、関係づけが理解にほぼ相当するのがわかるだろう。いずれの概念も習熟をめざすためのものだ。 

  • 価値を見いだす
  • 目標を設定する
  • 能力を伸ばす
  • 発展させる
  • 関係づける
  • 再考する

位置: 4,460

目的や目標を定めず、自分が何の能力を伸ばそうとしているかをあまり自覚しないままスキルの向上に励もうとする人があまりにも多い。

位置: 4,461
学習とはプロセス、メソッド、体系であり、こうしたプロセスを踏んでこそ専門知識が習得できるという考え方だ。学習の方法を心得れば、どんな分野でも専門知識を磨くことができる。頭を働かせ、戦略を立て、熟考し、練習して発展させ、関係づけと再考を行えば、習熟度を高めていくことができる。

位置: 4,473
ジマーマンが力を込めたのは、学習の方向づけを行う必要性だった。人は誰でも「自分なりの学習プロセスの主体」にならなければならない、と彼は主張した。本書でこのことを十分に伝えられていればと私は願っている。 

位置: 4,479
(「学習と記憶に関する研究からわかった、最も重要度の高い具体的かつ応用可能な原則に関する共通見解」)小テストの価値を力説し、分散学習の大切さを論じていた。「説明を求める質問」の多用や、別々の事例の間に「つながり」を見いだす重要性を説いていた。

位置: 4,500
彼らは頭を働かせる「活動」の重要性を強調した。「単にテキストを読み返すだけではいけません」とデローリエは説いた。「自分なりの説明を考えて、学習目標の『実行』をめざしなさい」。学生との面談で、デローリエは計画と目標を立てることにも触れ、「対象を絞り込んで、具体的な学習目標を立てて能力を伸ばす」 

位置: 4,527
学習支援に必要なのはアドバイスだけではない。本やハウツーガイドや多少の練習だけで終わらせてはいけない。私たち誰もが学習プロセスをマスターしなければならないのだ。私たち誰もが、学び方を学ばなければならない。 


ツールキット

学生のみなさんへ

位置: 4,535
価値を見いだす
学習に自分との関連性を探し、専門知識を自分にとって意味のあるものにする方法を見つけ出そう。

位置: 4,540
テキストを読み直したり蛍光ペンを引いたりといった受け身の学習法は使わないでほしい。自分で自分に問題を出したり説明をするといった能動的な学習法を使おう。テキストの内容を本気で覚えたかったら、体で覚える。概念を本気で理解したかったら、自分の言葉で説明してみる。

位置: 4,543
一つ例を挙げると、「反復」という手法もある。今度込み入った指示を出されたら、一手間かけて、言われたことを自分の言葉で繰り返してみてほしい。内容を自分なりに要約したときに、知識の創造という手順を踏むので、情報を記憶しやすくなるはずだ。 

位置: 4,546
目標を設定する。

初期の段階においては、集中が重要だ。どんなスキルを学びたいのかを厳密に見きわめなければならない。学習を一種の 知識の管理 と考えてほしい。学習目標は漠然とした願望であってはならない。あまりに高望みした学習目標は逆効果だ。漠然としすぎ、遠すぎるからだ。これは私たちの情動的な面を無視した目標である。それよりも、達成しやすいベンチマークを設定したほうが成功の確率が上がる。「ワルツを覚える」ではなく、「週一回ワルツのレッスンに参加する」、といった達成しやすい小さな目標を設定するべきである。

位置: 4,554
今までよりも少しだけ難しいことに挑戦してほしい。

位置: 4,560

知識とスキルを伸ばす。 

位置: 4,562
自分の知識を記憶から取り出す練習(検索練習) をするようにしよう。

位置: 4,566
もう一つとても大事なのがフィードバックだ。自分がやっていることの何が正しくて何が間違っているのかは知っておくべきで、パフォーマンスを観察するだけでも成果が高まる可能性がある。 

位置: 4,577
専門知識を発展させる。

位置: 4,578
スキルと知識に肉付けし、スキルを発展させることによって多くを得ることができる。

位置: 4,580
自分で自分に概念を説明したり、質問したりするのも学びが多い。 

位置: 4,583
こうした学習アプローチは知的な苦労をともなう。時間と努力とがんばりを要するため、感情面への支援が不可欠だ。どれだけささやかであっても、進捗を測って達成をねぎらうとよい。 

位置: 4,585
関係づけのスキル。 

位置: 4,588
専門知識分野内の関係性を検証するような質問を自分にしよう。この分野に潜む体系は何か? 本質的な因果関係は何か? アナロジーになりそうなものはないか? この情報を自分にとってどう価値あるものにできるか?

位置: 4,594
コンセプトマップも専門知識体系の中にあるつながりを発見する方法として効果的だ。

自分の理解を再考する。

位置: 4,605
内省も必要だ。自分が学んだことについて考えるのである。具体的には、自分にこう問いかけよう。「自分の考え方は変わったか? この教材の内容は全体としてどうつじつまが合うのか? 自分が学んだのは何で、次は何を学ぶ必要があるのか?」 

親、先生、上司の皆さんへ

位置: 4,612
学習者には支援が必要だ。専門知識の習得をめざす人を親、先生、上司の立場で支援する方法をいくつか下記に示す。 


期待値を示す。
学習中の人には褒め言葉を惜しまず、励ましを与えるべきである。

位置: 4,616
ただし結果ではなくプロセスに注目し、相手のモチベーションを維持するようにしよう。具体的には「頭がいい」という言葉を使わない。頭の良さを褒められると人は往々にしてそのことにあぐらをかいてしまい、能力以下のことしかしなくなる、とキャロル・ドゥエックは言う。成果ではなく過程を褒めよう。「あなたのがんばりはすばらしい」、「これからが大変でしょう」、「その調子でがんばって」

位置: 4,621
相手に期待することを話そう。学習の成功モデルを示すことも大切で、苦労に対処し失敗を克服する上手な方法を教えるようにしよう。ミスしたら自分にも周りにも「すばらしい学びのチャンスだ」と言おう。 
分散する。

位置: 4,625
生徒には数週間ないし数カ月の幅で学習を分散させることを奨励しよう。

位置: 4,628
宿題も同様で、一晩あるいは週末だけで一気にやるより、時間をかけて分散して取り組んだほうが効果が高い。
集中力を高める。

位置: 4,635
プレゼンは情報量が少ないほど効果が高い。情報が多すぎると、受け手のワーキングメモリーが容量オーバーになってしまう。プレゼン用のパワーポイント資料を作成する場合は、スライドに図を詰め込みすぎないようにしよう。スライド一枚に入れるメッセージは一つにしよう。

位置: 4,638
聞き手が聞き逃すことを想定して何度も繰り返そう。 

ミスをサポートする。

位置: 4,640
失敗は、うまくいかなかったと思う部分を理解するのに役に立ち、また、ミスによって記憶に残り学習が進むからである。

位置: 4,645
「親の仕事は子どもを不安な状態、答えがわからない状態に慣れさせることです」と研究者のリサ・ソンは言う。「長期的な学習力を最大化するためには、自力で学ぶ必要があるんです」

アナロジーを使う。
見直しを促す。

位置: 4,660
学生の過信を防ぐため、カーネギーメロン大学のマーシャ・ラヴェット教授は講義の後で一問か二問の課題を学生に与えることがよくある。この質問をラヴェットは「仕上げ」と呼んでいる。授業の一環として、学生に「自分は何を学んだか? 理解しづらかったのはどこか? わからないと思えるのはどこか?」と自問させるのである。

位置: 4,665
推奨するのは最も学習しづらい部分に学生の意識を向けさせることだ。ラヴェットの言う「いちばん手こずるポイント」に意識を集中することで、学生が学習から得るものは大きくなる。