Rabbit or Duck?

Chronicles of My Ambiguous Life

読書メモ17

 

実践 行動経済学

実践 行動経済学

 

 

 

はじめにーー「自由放任」でも「押しつけ」でもなく

163
「人は一般に自分がしたいと思うことをして、望ましくない取り決めを拒否したいのなら、オプト・アウト(拒絶の選択)する自由を与えられるべきである」──。このストレートな主張がわれわれの戦略のリバタリアン的な側面

172
「人々がより長生きし、より健康で、より良い暮らしを送れるようにするために、選択アーキテクトが人々の行動に影響を与えようとするのは当然である」──。これがわれわれの戦略のパターナリズム的な側面である。

174
政府も自覚的な取り組みを進めて、人々が自分たちの暮らしが良くなるような選択をするように誘導するべきだと主張しているのである。

189
われわれの言う「ナッジ」は、選択を禁じることも、経済的なインセンティブを大きく変えることもなく、人々の行動を予測可能な形で変える選択アーキテクチャーのあらゆる要素を意味する。純粋なナッジとみなすには、介入を低コストで容易に避けられなければいけない。ナッジは命令ではない。果物を目の高さに置くことはナッジであり、ジャンクフードを禁止することはナッジではない。

第1部 ヒューマンの世界とエコノの世界


第1章 バイアスと誤謬

利用可能性

587
悪い結果になるのではないかという人々の不安を高めるには、それと関連のあるうまくいかなかった出来事を思い出させるとよいし、人々の自信を高めるには、すべてが最高にうまくいった同じような状況を思い出させるとよい。

現状維持バイアス

780
デフォルト・オプションは強力なナッジとして作用する。数多くの文脈で、デフォルト・オプションはナッジとしてとりわけ強い影響力をもつ。


第2章 誘惑の先回りをする

882
コールド状態にあるときには、興奮の「影響下」にあるときに自分たちの欲求や行動がどれくらい変わるかなど意識しない。

896
いる。脳には誘惑にかられる部位もあれば、その誘惑にどう反応すべきかを評価して誘惑に抵抗できるようにする部位もある。

901
様々な状況で人は自分を「自動操縦」モードに押し込む。これは目の前にある課題に能動的に注意を払わない状態である(自動システムはこの状態だととても居心地がよい)。


第3章 言動は群れに従う

1,148
社会的影響力は二つのカテゴリーに大別される。第一のカテゴリーは「情報」である。大勢の人があることをしたり、考えたりする場合、その行動や思考はあなたがどうしたり、どう考えたりするのが最善なのか、という情報を伝える。第二のカテゴリーは「仲間からの圧力」(ピア・プレッシャー)である。

1,231
重要な点として、最初の判断は〝世代〟を超えて影響を与えることも明らかになった。

 1,307
実験の教訓はこうだ。人はあなたが思っているほどあなたを注意して見ていない。シャツに染みがあっても気にしなくてよい。たぶん誰も気づかない。しかし、人は誰もが自分のことを注視していると考えている。それが一因で、人々があなたがそうすると期待しているだろうと思うことに同調するのである。

1,329
あのミュージシャンや俳優、作家、政治家が成功したのはスキルや資質を考えれば当然だと考えたがる。その誘惑には気をつけなければならない。重要な局面で起こる小さな介入や、場合によっては偶然でさえ、結果を大きく変えることがある。

1,374
いる。広告では、自社製品を「ほとんどの人が選んでいる」とか、別のブランドから切り替える人が「増えている」としきりに強調される。それは過去の情報だが、広告会社にとっては未来を表すものとなる。ほとんどの人がいまどうしているかを伝えることによって、あなたをナッジしようとしているのだ。

1,412
あなたの隣人が「○○株を買っても損はしない」と話したら、その投資から手を引く絶好のサインになるだろう。

1,432
投票者を増やしたいと考えているなら、投票しない有権者がたくさんいると嘆かないでいただきたい*)。

1,486
社会的に望ましい行動にナッジしたいなら、現在の自分たちの行いが社会的標準レベルよりも良いことを絶対に知らせてはならない。

1,534
人々を特定の方向に押し動かそうとするより、小さな障害をとり除いたほうが効果的である場合が多い。

1,558
「情報」「仲間からの圧力」「プライミング」という社会的影響力は、民間部門、公的部門のナッジに簡単に利用できる。これから見ていくように、企業も政府も、社会的影響の力を使って様々な良い目的(そして悪い目的)を追求できる。


第4章 ナッジはいつ必要なのか

1,566
「役に立つ可能性が最も高く、害を加える可能性が最も低いナッジを与える」。これをリバタリアンパターナリズムの黄金則と呼ぼう。

1,585
自制心の問題が生じる可能性が最も高いのは、選択と結果にタイムラグがあるときだ。

 1,632
修得する可能性が最大になるのは、やってみるたびにすぐに明確なフィードバックが返ってくるときである。

1,672
良いナッジが最も求められているのは、選択の結果が遅れて現れる場合、選択するのが難しく、まれにしか起こらず、フィードバックが乏しい場合、選択と経験の関係が不明瞭な場合ではないかと思われる。


第5章 選択アーキテクチャ

デフォルト

1,839
最も労力を必要としない選択肢や最も抵抗の少ない経路だったらどんなものでも選ぶ人は多い。

良い選択アーキテクチャーを作る6つの原則(2,170)

  • iNcentives(インセンティブ
  • Understand mappings(マッピングを理解する)
  • Defaults(デフォルト)  
  • Give feedback(フィードバックを与える)  
  • Expect error(エラーを予期する)  
  • Structure complex choices(複雑な選択を体系化する)

第2部 個人における貯蓄、投資、借金


第6章 意志力を問わない貯蓄戦略
第7章 オメデタ過ぎる投資法
第8章 “借金市場”に油断は禁物

2,924
第8章では様々なトピックを取り上げたが、通底するメッセージはシンプルだ。住宅ローンとクレジットカードの世界は必要以上に複雑化し過ぎており、人々が搾取されるおそれがある。

2,927
政府は選択の自由をおおむね尊重するべきである。しかし、選択アーキテクチャーを少し改良すれば、人々がまずい選択をする危険性はずっと小さくなるだろう。

 

第3部 社会における医療、環境、婚姻制度


第9章 社会保障制度の民営化――ビュッフェ方式

3,156
「重要な意思決定をするのが難しくて不慣れな場合、そして、人々がエラーをしたときに即座にフィードバックを得られない場合には、ちょっとしたナッジを与えることは理にかない、適切ですらある」

3,178
たくさんの選択肢を与えるのはたいていは良いことだ。しかし、問題が複雑に入り組んでいるときには、良識ある選択アーキテクチャーを構築することで人々を正しい方向に導ける。


第10章 複雑きわまりない薬剤給付プログラム
第11章 臓器提供者を増やす方法
第12章 われわれの地球を救え
第13章 結婚を民営化する

4,065
結婚を民営化すれば、この問題が解消される。 このアプローチでは、国がカップルに与える法律上の地位は「シビル・ユニオン」と呼ばれる形態だけになり、シビル・ユニオンは、異性間、同性間を問わず、二人の人間の間の家族的パートナーシップ契約になる*。

4,151
歴史的に見ると、公的な結婚制度の主な目的は、入り口を制限することではなく、コミットメントを互いに破棄しにくいようにして、出口を管理することだった。

 

第4部 ナッジの拡張と想定される異論


第14章 一二のミニナッジ
第15章 異論に答えよう
第16章 真の第三の道

4,879
本書では二つのことを強く主張してきた。第一に、社会的状況の一見すると小さな特徴が人々の行動に非常に大きな影響を与えることがあり、私たちの目に見えなくても、ナッジはどこにでもある。選択アーキテクチャーは、良いものも悪いものも、広く浸透し、避けることができず、私たちの意思決定に強く影響する。第二に、リバタリアンパターナリズムは撞着語法ではない。選択アーキテクトは、選択の自由を守りながら、人々の生活が良くなる方向にナッジできる。

 

あとがきーーヒューマン投資家と二〇〇八年金融危機