Rabbit or Duck?

Chronicles of My Ambiguous Life

読書メモ20

 

 

はじめに

第一章 日本人独自のやり方で勝つ

スケジュールは固定するな

121
目標さえしっかりしていれば、スケジュールは 自ずと決まってきます。またスケジュールは、当初考えていたものとは大きく変わることもあります。 ところが、スケジュールが変わることを嫌がる人が、思いのほかたくさんいます。

物事のチェックは2ヵ月ごとに

146
小さな目標はもっと期間が短く、2ヵ月ごとに考えるべきです。ラグビーですと、大きな試合がそれぐらいの間隔でめぐってきます。対戦相手のレベルや特徴などを意識することで、こちらがそれまでに準備することが明確になります。

メッセージはシンプルを心掛けよ

166
いま本当に伝えたいことを1つに絞る。それも 冗長 ではなく、できる限りシンプルにする。 

潜在意識を利用する

300
 人間の行動は、意識よりも潜在意識に支配されていると言っても過言ではありません。そこに働きかけることは、催眠術に似ています。

 言葉をたくさん使い、口うるさく指導するより、潜在意識に働きかけたほうが、ずっと効果がある と思います。

小さい約束こそ守れ

325
些細 なことに思えるかもしれませんが、些細だからこそ大事なのです。約束は、小さなものこそ守らなければなりません。 

328
言葉ではいくらでもいいことは言えますが、行いが伴わなければ、信頼は生まれません。

日本人の結束力は世界一

351
すべての選手や部下は、公平に扱わなければならない──。これはリーダーが肝に銘じるべき鉄則ではないでしょうか。

向上心のない努力は無意味

359
努力は身体的なものと精神的なものが共存して、初めて実りあるものになります。   身体的、物理的な努力だけでは、意味がありません。精神的な努力が伴って、はじめて有意義になる のです。

 「普通」であろうとしすぎるな

レーニングは、時間を区切る

399
レーニングは、時間を区切ることが大切です。区切りがないと、緊張感を失い、トレーニングのためのトレーニングになってしまいます。これほど無意味なことはありません。

 コミュニケーションは一対一で

412
部外者が何らかの活動をしようとする時、まず大切なことは、国であれ組織であれ、そこには独特な文化があることを知ることです。 

414
部外者としてそこに入った時、最初にやるべきことは、自分の力で変えられるものと変えられないものを見極めることだと思います。

416
ここで注意していただきたいのは、「郷に入れば郷に従え」とは異なるということです。 

420
私がまず気付いたことは、チーム全員の前で自分一人が褒められたり、逆に批判されたりすることを、選手は嫌がることでした。

423
個人的なことを伝える必要がある場合は、別の場所で、一対一で話をするようにしました。それが日本で私が学んだ、最も大切なことの一つです。

褒めることを惜しまない

465
日本のスポーツの現場を見て、とても気になったのは、指導者が選手を褒めることが、非常に少ないこと。  指導者は、まるで褒めることを惜しんでいるかのようです。そして、否定的な言葉ばかり浴びせます。ほとんど言葉の暴力のような場合も少なくありません。

「完璧」にとらわれすぎる日本人

479
指導者の仕事とは、選手や部下の長所を丁寧に探し出し、それを活かすことなのです。選手や部下を、よりよくしたいのであれば、まず、その人のことを理解することが大切です。

487
日本のコーチはしょっちゅう選手に「ミスをするな」と言います。選手も常に、それを気にしています。 

第二章 どう戦略を立てるか

「繰り返し」の効果

511
人の心に訴える際、繰り返しは非常に効果があります。   それが本当か噓かは、関係ありません。何度も同じことを聞かされるうち、人は次第に本当だと信じるようになるのです。 

516
手を替え品を替え、話さなければなりません。何か違うようだけど、メッセージの内容は同じということです。ここに秘訣があります。

言葉を現実にする方法

533
発するメッセージが、本当かどうかは関係ありません。同じメッセージを繰り返すと、人はそれに即した行動を取るようになり、言葉が現実になるのです。

部下を公平に扱うことの大事さ

539
ある国の文化とは、その国の人々にとって、譲れるものと譲れないものがあるということです。外国人は後者を理解しなければなりません。

目先の勝敗は気にしなくてよい

567
目標がはっきりしていれば、目先の勝敗はたいして問題になりません。チームや個々の選手も、何が欠けていたのかを課題として自覚します。それは自分の基準を作ることであり、基準は成長とともにどんどん上がっていきます。 

573
成功とは、相手に勝つことにほかなりません。勝ちたいなら、相手を上回る準備をするしかないのです。

589
人間にとって、習慣ほど安定したものはありません。一旦習慣になると、忘れることはありません。欲求を感じなくても、行うようになります。

 明確なビジョンを持つ 

618
読売ジャイアンツ監督)原さんは、選手によって対応を変えていました。ある選手には父親のようにやさしく接するかと思うと、ある選手にはきびしい口調でおうじていました。その臨機応変の対応が、非常に印象的でした。

欠点は、一つの条件にすぎない

657
彼らの素晴らしいところは、体格が小さいことを決してネガティブにとらえないことです。欠点は、誰にでもあります。しかし、それをネガティブにとらえると、そこで負けは確定してしまいます。要は欠点とは、一つの条件にすぎないということです。 欠点を欠点ととらえるか、ただの条件と考えるかが、勝利や成功への大きな分かれ目になるのです。

663
コントロールできないことは、考えるだけ無駄ですので、あれこれ考えても仕方がありません。放っておくのが一番です。

 努力してこなかった日本人

699
努力は100パーセントのものでないと、意味がありません。 80 パーセントや 50 パーセントのものなど、そもそも努力ではないのです。

706
私はいろんな国の選手を指導してきましたが、努力が一番不足していると感じたのは、日本人です。

100パーセントの努力が大事

728
ある国の教育や社会のシステムというのは、あまりに巨大です。私一人が変えようとしても、どうなるものでもありません。

プレッシャーがなければ弱くなる

743
どの世界でも、プレッシャーがなく育ってきた人間が弱いのは、当然です。

日本人は非常に頭のいい民族

798
有効な準備をするためには、根拠が必要です。その点、データは非常に明確な根拠を与えてくれます。

 しかし、データは万能ではありません。数字だけではわからないこともあるため、そこは注意を要します。

客観視すれば、進むべき方向がわかる

811
印象というものは、実にいい加減なものです。人はその時の感情によって、どのような印象でも抱きます。その向こうにある事実など、ほとんど見ていないことも少なくありません。 時間を置いたり、記録したもので振り返ったりすることで、印象から不純物を取り除くことができます。これが客観視するということです。

832
想定以上の練習をしておくと、実戦では多少楽に感じられます。つまり相手に対し、心理的に優位に立てるのです。

 第三章 何が勝敗を分けるか

戦いに興奮はいらない

846
(一時的な興奮では80分はもたない)冷静かつ、知的な闘志です。このような闘志には、安定感と持続性があります。

855
ビジネスなど、たいていの勝負は長丁場です。そこで勝つためには、感情的で、興奮しやすい闘志は不要です。 本当に必要なのは、冷静で、知的な闘志です。大きな感情の波を克服したその向こうに、成功はあるのではないでしょうか。

スポーツの地位を高めるべき

861 (ラグビーに関して、シンプルな考えを持っていてそれを選手に伝えるだけ)
しかし、教え方は違います。それは国によって、文化的な背景が異なるからです。 まず私と選手たちの間には、文化の違いによる溝があります。お互いそのことを認めなければなりません。

863
そのうえで私は、自分の考え方が、選手たちにどのように受け止められるかを考えます。 国によって、受け止められ方はさまざまです。あまり抵抗のないこともあれば、相当な抵抗のあることもあります。 

865
しかし、そのことは私には、大した問題ではありません。 私のするべきことは、選手たちのいいところを引き出し、それを結集して、チームを強くすることです。その点では、何も変わりません。

異国で指導する秘訣

895
チームを改善するとは、結局、新しい要素を加えることです。これはどこの国であれ、定着するまで時間がかかります。 何かを受け入れてもらうためには、信頼を築くしかありません。それは国や文化に関係なく、人間同士の基本だと思います。

国家を歌えないチームが弱い理由

902
そこで活動しようと思うなら、コーチに限らず、あらゆるビジネスパーソンは、文化や習慣にしっかりと配慮すべきです。 文化を顧みず、いきなり自分のやり方で始めても、受け入れられるわけがないのです。それは独りよがりにすぎません。

コーチはセールスマンに似ている

939
あらゆるビジネスは、互いに通じ合うものがあります。異なる分野にも興味を持ち、そこからも吸収しようという貪欲さが大切です。

944
私の戦略を、すぐに吞みこんでくれる選手もいますが、なかなか理解してくれない選手もいます。  そういう選手に、私は何とか「品物」を売ろうと、いろいろ言い方を変えたりしながら、丁寧に話します。 

947
決して、上から目線ではいけません。自分の売ろうとする「品物」が、どれほど面白く魅力的かを、相手の立場になりながら伝えるのです。

953
わかっていないのに「はい!」と返事をすることは、 欺瞞 以外の何ものでもありません。それでは何の進歩も期待できません。

954
わからないことを聞き返すのは、コミュニケーションの基本です。そして互いに納得してこそ、戦略は機能するのです。

 「ミスをしないこと」は決して重要ではない

985
ミス」という言葉は、人を 呪縛 するのです。  ですから、「ハプニング」「アクシデント」など、あまり重くない言葉に変えたほうがいいような気がします。 「ミス」は、それ自体決して重要ではありません。 「ミス」のあと、どのような行動を取るか、あるいは、そこから何を学ぶかが重要なのです。

 チャレンジするから成功できる

1,021
文化は円熟すると穏やかになり、ハングリーさを失います。オーストラリアのスポーツ文化も、勝敗にこだわるより、市民がみんなで楽しめ、ハッピーになれるものが、好まれる傾向にあります。

 状況判断が苦手な日本人

1,040
日本の選手はデシジョン・メイクが苦手です。 これは指導する側が、何が正しくて、何が正しくないかを、すぐ教えてしまうからだと思います。それでは自分で考えたり、判断したりする力が身につかないのではないでしょうか。

1,053
私は何事でも、問題は人に指摘されるより、自ら気付くほうがはるかにいいと思います。それは理解の度合いが、大きく異なるからです。

経験より熱意が大事

1,068
プレッシャーに耐えるためには、やはり経験が必要ということです。  だからといって、私は経験を最も重視するわけではありません。一番大事なのは、熱意です。 

1,069
経験と熱意は、ある程度 相反 するものだと思います。熱意は、年長者より若者のほうが多く持っています。

日本代表はこれからどうなる?

1,097
審判は機械ではありません。人間であり、心があります。ファンの存在は、審判の心に影響を与えます。  極端な言い方をすれば、大勢のファンがいることは、審判を味方につけることと言えるかもしれません。 チームとファンの絆は、ここにあるのです。 

1,099
日本にラグビーのファンを増やすためには、ワールドカップで勝つことが、絶対に必要です。

成功の後に、落とし穴がある

1,153
私は、リーダーとして最も必要な資質は、観察力だと思います。部下の表情、態度、服装などから、今、どのような心理状態にあるかを読まなければなりません。 

1,155
読むだけではいけません。どのような対応をするかを、決めなければならないのです。それはケース・バイ・ケースです。

1,162
リーダーの条件は、感情をコントロールできることだと私は思います。 

第四章 成功は準備がすべて

感情で人を評価するな

1,242
組織から感情の影響を断つために、何をすればいいか?  それは能力や結果に対して、きちんと報酬を与えることではないでしょうか。

1,245
結果を出した人や結果に貢献した人が、どんな形であれ、報われることが大事です。報酬をあらかじめ用意しておき、 遺漏 なく与えること。これが組織を運営するうえで、極めて大事なのです。

1,253
公平に評価し、きちんと報酬を与えることは、本当に大事です。  不公平感は、組織をむしばみます。そのような組織が十分な力を発揮できるはずがないのです。

誰でも今よりいい自分になりたい

1,265
結局、人というのは、今よりいい自分になりたいのです。あるいは、今よりいいことに参加したいのです。

 勇気とは、慣れ親しんだ自分を捨てること

1,294
「自分をよりよくしたい」という気持ちを起こし、それを実行しようとすれば、次に必要なものは、勇気です。

1,300
勇気とは、慣れ親しんだ自分を捨てること なのです。

1,306
考えることと、それを行動に移すことには、大きな隔たりがあります。二つの間にどっしりと横たわっているのが、勇気ではないでしょうか。

 冒険しない人は後退するだけ

1,331
人間にとって、冒険することは絶対に必要です。冒険しないと、人は後退するだけだと思います。

自分を追い込むための訓練

1,346
何事も、本番で大きな力を発揮しようと思えば、普段から自分を追い込む訓練をすることが必要 ではないでしょうか。

1,352
コントロールできることは、徹底して準備し、確実にしましょう。一方、コントロールできないことは、意識から捨て去ってしまえばいいのです。

言い訳が成功を阻んでいる

1,378
何かをよくしようと思えば、まず自分を客観的に見つめることが大事です。なぜなら、他人に指摘されるより、ずっと強い意志で取り組めるからです

1,382
他人の欠点が見え、それを直してやりたいと思った時、人はどうしても高みから指摘し、命令口調で直すように言ってしまうものではないでしょうか。しかし、それではあまり効果がない と、私は思います。 

1,385
その人に、自分を客観的に見つめる機会を与えるべきです。多くの場合、人は他人に言われなくても、自分の欠点をわかっています。それを自ら、口に出させるようにすればいいのです。

参加者に特別な意識を持たせる

1,393
もっとモチベーションを高める方法があります。それは自分たちの参加しているプロジェクトが、何か特別な意味のあるもの、重要な意義のあるものだと、感じさせることです。

 心配ほど無意味なものはない

1,442
コントロールできることだけを考える。コントロールできないことは、放っておく。

まず少人数で意見交換を

1,524
学ぶとは、新しいことや自分が知らないことを、先入観なく虚心に見つめ、吸収することです。

決断するから進歩が生まれる

1,589
何かを決断するのは、非常に勇気がいります。はじめのうちは、間違った決断をしてしまうでしょう。しかし、やがて責任感とともに、決断に正確さが出てきます。これこそが、進歩なのです。 

1,593(上司が部下に勇気を与えることが大切、決断は批判せず、努力に口出しすべき)
決断と努力には、違いがあります。その人がどれだけ努力するかということは、コントロールできる要素だからです。

明日のために準備せよ

1,603
皆さんがリーダーや上司なら、部下のことを、常に観察しなければなりません。 顔色、動き、他人との関係……これらに着目しながら、彼が本気で仕事をする気になっているのか、ただオフィスにいる時間を埋めているだけなのか、見極めることが大切です。

おわりに

解説

 

 

読書メモ19

 

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

Learn Better――頭の使い方が変わり、学びが深まる6つのステップ

 

 

イントロダクション

ダーツの実験

位置: 159
学習とはつまり理解のプロセスメソッド体系なのである。学習とは一つのことへの集中と計画性と内省をともなう活動であり、学習の方法がわかれば習得の度合いと効果は大きく上がる。

 究極のサバイバルツール

位置: 253
学習の目的はある事実や概念についての考え方を変化させることであり、学習にあたってめざすのは思考の体系を学ぶことなのだ。 

位置: 257
学習とは『整理されたわかりやすい体系の大切な部分を理解すること』と考えよう

 体系的アプローチ

位置: 339
もし知識を深める価値のあるスキル、つまり習熟する価値のあるスキルであれば、その専門知識を身につけるために体系的なアプローチをとる必要がある。次の手順だ。

位置: 341

  • 価値を見いだす:学びたいと思わなければ学ぶことはできない。
  • 目標を設定する:知識を習得する初期の段階においては、集中が重要だ。何を学びたいのかを厳密に見きわめて、目的と目標を設定しなければならない。
  • 能力を伸ばす:学習のこの段階では、スキルを磨き、パフォーマンスを向上させることに特化した手段を講じる必要がある。

  •  発展させる:この段階では、基本から踏み出して、知識を応用したい。

  •  関係づける:すべてがどう噛み合うかがわかるフェーズである。私たちは結局、個別の事実や手順だけを知りたいのではなく、その事実や手順が他の事実や手順とどう関わり合うかを知りたいのだ。

  •  再考する:学習には間違いや過信がつきものだから、自分の知識を見直し、自分の理解を振り返って、自分の学習したことから学ぶ必要がある。  

これらの段階すべてに通じるテーマ

位置: 353

学習とは頭を働かせる「活動」という面が強く、積極的に関与するほど学びも深まるということだ。 

位置: 356

同時に、学習を管理してほしい。フィードバックをもらっているだろうか。自分のパフォーマンスをベンチマークしているだろうか。 

位置: 360

自分の思考についても必ず思いを巡らすようにしよう。本当に理解しているか。どうしても避けられない「忘れること」について手を打っているだろうか。これについては、学習を分散させるのが大事

位置: 368

専門知識の習得プロセスには往々にして認知的な面ばかりでなく非認知的な面もある。例えば、「自分にはできる」と思わなければ学習はできない。

位置: 370
専門知識を習得するには、関係を見いだす必要もある。効果的な学習とは要するに知識の総体の中の相互関係をつかむことだ。 

 第一章 価値を見いだす

位置: 412
何であれスキルを習得するうえで、モチベーションは最初の一歩である。


意味を自ら発見する

位置: 471
報酬、目新しさ、背景情報──個人的に意味があるという感覚を創り出す際にはいずれも効果がある。そう考えると、自発的なモチベーション──生来の関心──はそれ自体が一種の価値だ。私たちが何かをするのはそれをしたいからだ。だが、ある対象について学ぶ意欲を持つには、その対象が自分に関連性があると思わなければならない 

位置: 484
人はこう感じるべき、こう考えるべきと指示されると、脅されているとか過剰に管理されていると感じかねないからだ。

 それよりも、活動の意味を自分で見つける必要がある。つまり、価値は人から発して対象物に、個人から発して知識やスキルに反映されるものでなければならない。 

学びを自ら「作り上げる」

位置: 551
「意味」が充足感の最大の原動力に挙げられることがわかった。人は自分の人生に、幸福感や利益以上に価値を求めており、「高い意義を感じている」と申告する人のほうが不安感が少なく、健康で、人生への満足度が高い。

位置: 565
つまりは学びたい対象を自分といっそう関連性の深いものにするということだ。それは習得したいスキルに意味を──そしてモチベーションを──見出す手段となる。 

位置: 576
ラーン・クラフティング、いうなれば課せられた知識の習得に意味を探す作業だ。具体的には、自分に次のような問いかけをする。この学ぶ対象は私にとってどう価値があるのか? どうすればもっと自分に関連性があるようにできるか? この知識を自分の生活にどう利用できるか? 

位置: 604
知識は分割すると最も効率よく学べる。ただし関与の深さ、モチベーションを維持するためには、選択の余地もほしい。

位置: 607
知識の習得には、自分の欲求を深く掘り下げる必要がある。

探索する種

位置: 624
新規性のあるものを探す体験をすると、快感を与えるドーパミンの分泌レベルが急上昇する。

位置: 672
学習の難易度が上がったら感情面の支援が必要になることも知っておきたい。やりとげるためには探求システムをうまく管理する必要がある。私自身はモチベーションを火ととらえるようになった。燃え上がらせるには情動の火花が必要だが、管理しなければたちまち消えるか、燃えすぎて手に負えなくなる。つまり探求心が足りなかったり、ときめきが足りなかったりすると、知りたいという欲求はなくなる。

 

「知的努力には伝染性がある」

位置: 763
(ティングリン・クレモンズは生徒たちと)親しいつながりを作り、個人的な指導を心がけている。生徒たちに「メンターを見つけなさい」とアドバイスもしている。

位置: 765
生徒たちには帰属意識を持ってほしいのだと熱く語った。そういう社会的絆が結局は生徒の学習へのモチベーションを維持する。

  

意味とは学ぶこと 

位置: 771
価値を探すべき理由はもう一つある──私たちが学ぶ理由が実はそこにあるのだ。私たちがスキルや知識を獲得するのは経験したことを理解するため、自分を取り巻く世界に説明をつけるためである。

位置: 792
脳はよくコンピュータにたとえられるが、実はこれは正しくない。その発想でいくと、まず単純にハードドライブの容量を増やせば頭が良くなりそうだ。また、脳が受動的に情報を受け入れるだけということになる。

位置: 794
それよりも、脳は一般道や高速道路の集合体とか街路と有料高速道からなる道路体系のようなものと考えたほうが実態に近い。道路の喩えでいうと、簡素な一本道──例えば未舗装の土の道──を通すのは実に簡単だ。愚直に行き来を繰り返せばよい。学習も同じだ。基本的な概念やスキルはだいたい習得しやすい。

位置: 810
「情報に意味を込めて考えれば、意味のない表面的なレベルで考えるよりもはるかに記憶しやすいのです」 

位置: 863
彼は他人について「失敗した」という言い方をしない。「理想には少し届かなかった」と言う。

位置: 869
まず、情報を選択しなければならない。ソビエトの歴史とか仏教哲学という具合に、学ぶ対象を絞り込む

位置: 870
次に、今ある知識と学びたい情報の結びつきを頭の中に作ることによって、その情報を自分の知識に統合しなければならない。

位置: 879
能動的な学習アプローチの利点はもっと難しい認知タスクにも通用する。例えば読書を考えてみよう。読んでいることを頭の中にイメージとして思い描けば──文章を頭の中に描き出せば──記憶に残りやすい。 

位置: 887

(学習を頭を働かせる「活動」ととらえる研究によって)
蛍光ペンでなぞるやり方は学習にあまり効果がないとわかった。なぜか。マーカーを引くのは人が知識を構築するのに十分な行動ではない、ということらしい。同様に、ダンロスキーらによれば繰り返し読む効果も限定的だ。なぜか。これもやはり頭を働かせる「活動」を促すには至らないからだ。

位置: 891
自分で自分に問題を出したり、自分に説明してみたりするような、能動的な学習活動が最も効果が高いと話してくれた。

言語の摩滅

位置: 959
能動的な学習が効果を上げるのは、頭をフル回転させて考えているとき、それも専門知識について頭を使っているときだという。

マインドセットの大切さ

位置: 1,005
学習にはマインドフルネス、つまり積極的な価値の探求が必要だと話してくれた。

位置: 1,006
このような思考態度、視点は、単に注意を向けることではない。その体験の新しさを強く意識する形で体験に関与する必要がある。脳の「自動操縦」モードをスイッチオフにして、能動的に専門知識を探求しなければならないのだと彼女は言った。  このマインドフルネスはさまざまな点でコンテキストに帰着する。

位置: 1,016
専門知識の範囲を限定せずに考えたほうが意識の質が上がるという。課題を別の視点から眺めるのもよい。視点を変えると学びが豊かになるのは、その専門分野内の細かい部分に意識を合わせやすくなるからだ。

位置: 1,018
脳の自動操縦状態を解除するいちばんの方法は意味を探すことだ。

位置: 1,034
スキルを習得しようとしているときはニュアンスに注意すること。学習するためには、専門分野に元からあったものは何か、新しいものは何かを能動的に追わなければならない。つまり、違いを探すことで理解が得られる。「新しいものに気づく、というのがマインドフルネスの定義なのよ」 

MET(Measures of Effective Teaching[効果的な教育の指標])研究

位置: 1,053
現実的に言えば、学習には指示が必要である。

位置: 1,054
指導と支援が必要なのだ。メンターやトレーナーやインストラクターが果たす役割はいずれも非常に大きい。本書では繰り返しこの考え方を取り上げる。

位置: 1,074
教育に関して学生の成果を高める大きな要因は二つあった。一つめは、研究者が「 勉強圧力」と呼ぶ、教師が学生に対して勉学に励むよう発破をかける度合いだ。教育者が学生のがんばりや教材への真剣な取り組みをどれだけ後押しするか、である。

位置: 1,077
二つめの要因は「 勉強支援」、すなわち教師が学生にモチベーションを感じさせる度合いである。この第二の要因は学生が自分との関連性を感じられるかどうか、学生と教師の間の個人的つながりの感覚がポイントだ。

位置: 1,080
高い成果を上げる教師は学生に学業への関与を促し、対象の意味を理解するよう努力させる。つまり、優秀な教育者は学生を、頭を働かせる「活動」としての学習に深く関与させるのである。また、優秀な教師はモチベーションと支援を与える。学生が学習に意味を見いだす手助けをし、自主性と自分に関連性があるという感覚を与える。  

第二章 目標を決める

位置: 1,111
ディロン中学校は底辺校からの脱出をなしとげた。その原動力の一つが「サクセス・フォー・オール」という教育改革の取り組みである。 

位置: 1,131
「サクセス・フォー・オール」は目標を高く設定していた。このプログラムの成功の秘訣は当時も今も変わらず、目標設定にある。

位置: 1,135
つまり「サクセス・フォー・オール」の成功の要因は、学習は偶然にできるものではない、とごく単純明快に考えたところにある。

位置: 1,138
知識を習得するにはその知識の習得に特化した方法が必要なのだ。 

位置: 1,143
何も考えずに学習してはいけないということである。創造性と発見はやはり重要だ。深い理解を生み出す機会も重要だ。だが学習の入り口の段階では、プロセスをしっかり管理する必要がある。 

位置: 1,145
すなわち目標設定、計画策定、前提となるスキルの習得、習得したい専門知識の絞り込みを行うということ

位置: 1,147
本章ではこの考え方を詳しく取り上げ、スキルの習得をめざす人にとって重要な二つの問題をじっくり見ていく。何を学習するか、学習するにはどのような計画を立てるべきか、の二点だ。 

位置: 1,172
学習にこのような社会的、感情的な要素があるからこそなおさら、目標を明確に設定したアプローチが必要になる。「学習は場当たり的にできるものではありません」と彼は私に話してくれた。「学習を進めながら計画を変更するのはかまわないが、計画は絶対に必要です」


短期記憶の容量の小ささ

位置: 1,222
心配事が知識の習得の大きな障害となりうるのも、短期記憶の容量が限られているためだ。恐れていることや不安なことがあってストレスを感じていると、集中できない。

位置: 1,243
有能な教師は習得しやすい量に小分けして、学生に一口サイズで知識を与える。もっと正確に言うと、優れた教師は認知力の容量をよくわかっていて、すんなりと理解できるような教え方をするのである。

 知識は学習の土台

位置: 1,278
先生に一対一で目をかけられれば、フィードバックがたくさんもらえる。生徒の動機づけもしやすい。生徒が何に意味を感じるかが先生にわかるからだ。 

位置: 1,288
個人指導に効果があるのは、生徒がわかっていることを土台にするからだ。先生は私たちがすでに理解していることに合わせて情報をくれる。イントロダクションでこれを「 知識効果」と呼んだ。要するに、対象についてまったく知識がないと学習は難しいのである。

位置: 1,324
個々人にとっては、専門知識の習得にはどのような前提知識が必要かを明確に見きわめるのがスタート地点となる。 

学習にコンフォートゾーンはない

位置: 1,369
学びの効果が最も高いのはまだ理解していないものの中で最もやさしい題材を学ぶときである。

思考の質を上げる

位置: 1,415
学習を始めたばかりの人への大事な教訓はまず、専門知識がどのように体系立っているのかを知るために、学習の対象領域に通底する論理の理解をめざそうということだ。

位置: 1,416
その一つの手法は、あるテーマについて新しく学ぶ前に、そのテーマについて知っていることを書き出すというものだ。

位置: 1,426
自分自身で行う小テストも、専門知識を体系化するうえで同じくらい重要だ。

位置: 1,449
知識習得とは内容を覚えるだけの話ではないということだ。専門知識は単なる事実情報の蓄積ではない。何かを本当に知るためには、思考のスキルも獲得しなければならない。

思考についての思考―そして情動

位置: 1,544
スペシャリストがある課題に取り組むときには、問題をどのような視点からとらえるかをじっくり考える。自分の答えに筋が通っているかどうかに感覚を研ぎすませる。どうやって答えにたどりついたかを内省する。

位置: 1,549
学習にまつわる最大の問題の一つが、メタ認知の不十分さだ。私たちは知らないことを理解するために最善を尽くしていない。

位置: 1,551
メタ認知とは結局、自分に投げかけるいくつかの問いにほかならない。自分がわかっていることはどうしたらわかるのか。あやふやなのはどの点か。理解度を測る手段はあるか。このような問いには大きな効果がある。学習に関しては、メタ認知はしばしば地頭の良さより重要だ。

感情管理の必要性

自己効力感

位置: 1,654
イメージトレーニングの効果は脳と身体が情報を双方向にやりとりする性質のおかげだ。イメージトレーニングがこれだけ劇的な効果を生み出せる理由は、身体と心の深い結びつきにある。

位置: 1,656
イメージトレーニングのおかげで、テイラーは自己効力感を獲得した。これは自分の能力への信頼感、きっとうまくいくという気持ちであり、学習に際しての情動の気まぐれに対処するうえで非常に重要だ。

位置: 1,663
ある活動をやりとげられるとわかっていると、その活動にはるかに身が入ることにバンデューラは気づいた。 

位置: 1,673
自己効力感は学習につきもののフラストレーションに対する緩衝材の役目を果たす。これから達成するものがわかっていれば、挫折や気を散らすもの、傷ついた感情への対処力も、学習に必要な一心不乱の集中力も上がる。 

位置: 1,676
人は学習するとき、「自分は十分にやれているか」、「失敗するのではないか」、「間違っていたらどうしよう」、「もっと他にやるべきことがあるのではないか」など、つきまとってくるさまざまな感情への対抗手段を必要とするという。バンデューラによれば、こうした思考や情動は知識習得能力をたちまち奪う。短期記憶の妨げになるからだ。 

位置: 1,690
一方、気持ちのモチベーションを維持する必要もある。これに関しては、自分への語りかけが重要だ。その際、黒か白かの両極端な思考は避けなければならない。だから「私は全然だめだ」と自分に語りかけるのではなく、「私は悪戦苦闘しているところだ」と語りかけよう。また、少しでも前進したら見逃さず、どんなに小さな成果でも「今日は三時間やった」などと自分を褒めよう。 

位置: 1,707
学習とは「心の目で成功を実感すること」である。 

学習は難しくて当たり前

位置: 1,736
ソンのアプローチの根底にあるのは学習とは頭を働かせる「活動」であるとする考えで、ソンは自分の研究室でも同様の効果をまのあたりにしていた。認知能力を活用するほど、得るものは大きい。

位置: 1,744
長期的な学習力を最大化するためには、自力で学ぶ必要があるんです

位置: 1,771
学習は難しいものと知っておかなければならない。さらには周囲の人にも信じてもらわなければならない。学習の苦労と困難を乗り越えるには社会的支援が必要だ。 

位置: 1,782
学習する際、私たちは社会的支援と社会的重圧の間でバランスを取らなくてはならない。 

位置: 1,818
人は学べるという実感がなければ学べない。

位置: 1,819
学習には自分がこれから何を学ぶか、今どれだけ学べているかを認識することが大事だ。学ぶ準備はできているか? 自分が知っていることをわかっているか? 学び足りていないことが何かわかっているか? 次に学ぶことは何か? このような目標を絞り込んだ、メタ認知的な焦点の当て方が、新しい分野で知識を習得しようとするときの要である。テーマについてあまり知識がない人には体系立った教育のほうが適している。

位置: 1,824
専門性が高まれば、新規性のある、非構造化問題で知識とスキルを実践したくなる。


第三章 能力を伸ばす

位置: 1,889
初心者はすべからく自分が伸ばすべき能力がわかるというメタ認知力が欠けている。それが初心者たるゆえんだ。

位置: 1,897
スキルを伸ばすには評価も重要だ。目標を絞り込んだフィードバックが必要となる。

 位置: 1,911
サミュエルズはよく言った。「ささいなことが肝心なんだ」


モニタリング

位置: 1,925
モニタリングとは要するに気づきの一形態であるという。結果を記録するためには何が起きているかに気づかざるをえない。

位置: 1,960
それでも、このように意識の焦点を絞ると成果は向上する。パフォーマンスの観察をまめに行うとほぼ何でも上達する。

 

外部からのフィードバック

位置: 1,980
実はモニタリングよりも効果の高いフィードバック法がある。それは外部からのフィードバックだ。 

位置: 1,989
その大きな理由は、自分のミスにはなかなか気づきにくいことである。モニタリングしていてさえ、ミスのすべては発見できない。これが学習の本質、知識の本質であり、ここでもまた「教育者の価値」を思い知らされる。的を絞ったフィードバック、外部からの判断をしてくれる他者が必要なのだ。 

位置: 2,001
もちろん、フィードバックにも問題点はある。行き過ぎる場合があるのはもちろん、良いフィードバックでも具体的に何をすべきかまでは教えてくれない。学習は自分で創り出していかなければならないからだ。総じて役に立つフィードバックは指針を与えてくれる。能力を伸ばす方向づけをしてくれるのである。 

位置: 2,008
良いフィードバックは、気づきとともに正しい結果を生み出すための体系的な方法を与えてくれる。 

位置: 2,012
体系立ったフィードバックが学習プロセスの初期には重要で、配慮の行き届いた批評と指導は初心者にきわめて大きな影響を与える可能性がある。

位置: 2,035
フィードバックと学習プロセスに関して、もう一つ大事なポイントがある。人は説明を必要とすることだ。学習するためにはなぜ自分が間違っているのかを理解し、自分の考え方へのフィードバックをもらう必要がある。

 位置: 2,070
ハッティによれば、フィードバックの効用は正しい情報を得ることだけではない(もちろんそれもおおいに役立つだろうが)。ハッティをはじめとする専門家は、フィードバックが最大の効果を上げたと言えるのは、学習者が新しい推論法を獲得したとき、あるテーマについての考え方が変化したときだと主張している。

位置: 2,076
良いフィードバックには必ず「先行予測」の要素が含まれているという。つまり学習で次にどこに進めばよいか、見当をつけさせてくれるのだ。

苦労の本質と反復

位置: 2,086
スキルの伸びがフィードバックから始まるとすれば、次に向かう先には苦労が待ち受けている。人は必ず失敗する。フィードバックとは自分の間違いを知ることに尽きる。

 位置: 2,106
専門分野を身につけるには反復が必要だということだ。専門分野の力を伸ばすためには、その専門分野に何度も、できれば何通りもの方法で取り組む必要がある。

位置: 2,127
つまり学習のコンフォートゾーンは常に変化し、少しずつ難しくなり、レベルが上がらなければならない。学習が毎回苦労をともなうものとなるようでなければならないのだ。

 「検索練習」

位置: 2,149
彼はたえず自分に質問を出して、さまざまな単語を思い出せるかどうか確認する。信号待ちしているときや自分の研究室で人を待っているとき、彼は自分がすでに学んだこと、これから学びたいことについて自分に質問している。 

位置: 2,156
学習学の世界では、検索練習はテスト効果とも呼ばれる。

 脳の可塑性

位置: 2,214
脳はどうやら知的な苦労に対処しようとするときに白質を作るらしい。自分が知っていることとできることの間に大きなギャップがあると、脳はそれに対処しようと構造を変化させる。

位置: 2,216
ドイツの研究者グループがなぜそのようなことが起きるかについて新しい解釈を唱えた。「需要」が脳の「供給」をオーバーしたときに新しい神経構造が創り出されるのだという。

間違いの心理

位置:2,277

間違いは思考の本質である。間違いは概念形成の核心だ。学び、専門知識を育てる際に間違いをおかすのは、それが理解するために必要だからだ。

位置: 2,321
人が間違いや挫折、損失や失望の情動的な側面と付き合う手だてを必要としているのは明らかだ。心のレジリエンスのようなものが必要なのだ。その点で、学習のプロセスは情動コントロールのプロセスとも言える。

位置: 2,341
ミシェルは「if/then〔こうだったらああする〕」プランも推奨している。「勉強はあとでやろう」と考えるのではなく、「今勉強したら後で出かけられる」と考えるのである。明確なルールを決めておくと、情動の管理がしやすくなる

位置: 2,345
(習慣化させることの)目的は「努力の要る自制から努力を抜く」ことである。

位置: 2,368
マインドセットについて)間違いに対する思考態度は社会的に形作られる面があり、メンターやリーダーや親からのささいな言葉が「生まれ派」が「育ち派」に変わるきっかけになると語った。

位置: 2,375
親が失敗を「生まれ派」のように能力が足りないせいだと言うか。それとも「育ち派」のように学ぶチャンスだと語るか。親が後者の対応をすれば、子どもは「育ち派」になる可能性が高い。つまり、親が失敗で成長できると行動で示せば、子どももその考えを信じる可能性が高くなる。

位置: 2,378
自分一人の努力においては、やはり自分に語りかける言葉が鍵を握る。ドゥエックは心の中の会話を変えるとよいと言う。ミスにわずらわされず、成長に目を向けよう、失敗や間違いはスキルや知識を獲得するチャンスととらえよう、と自分に語りかけるのだ。 

位置: 2,383
はスキル獲得には困難がともなうとあらかじめ予想しておくとよい、と言う。ミスや苦労をしても、ダックワースのように「これがふつうだ」と思えばよいのである。

位置: 2,389
褒めるときには具体的に成果と結びつけて褒めるべきだとドゥエックは言う。「練習が報われたね」、「よくがんばったね、すごく進歩したよ」という具合だ。 

位置: 2,391
最も大切なのは成長を信じることである。 

 
第四章 発展させる

位置: 2,550
学習とは知識の発展、専門知識の領域の拡大とも言える。学習プロセスのこの段階においては、理解を深化させなければならない。 

位置: 2,561
最も大事な概念を要約することによって、その概念への理解が深まり、その概念に意味が生まれる。この行為は成果に明確なプラスの効果をもたらすことがわかっている。 


マイルス・デイヴィスの傑作

位置:2602

知識領域を広げることは知識領域を説明できることに非常に近い。学びながら説明を求める質問を自分に問いかけると習得の度合いが高まることが、様々な研究で証明されている。具体的には「この概念を説明できるか?」、「このスキルを開設できるか?」「自分の言葉で言えるか?」などだ。

学習の発展としての議論

位置:2,659

議論はある分野内の物事のつながりを豊かにしてくれる。習熟した領域についてとことん考えさせることのよって、専門知識を強化してくれる。

位置: 2,680
面接では実際の仕事ぶりはほとんど予測できないことが示されている。候補者がそのポジションをこなせるかどうかを判断するには、紹介状や経歴や筆記試験などの確実なデータのほうがずっと重要である。

応用の必要性

位置: 2,697
学習は具体的であるほど理解しやすい。学習プロセスに関して言えば、すでに知っていることを、これから知りたいことの理解を助けるために応用できるのである。 

位置: 2,742
学習は全身で行うものだということだ。情動、感情、触覚に至るまですべてが知識を支えている。学習とはまさに文字通り「活動」なのであり、対象のテーマやスキルに体で関与すれば学びはさらに豊かになる。

「ハイテック・ハイ」

位置: 2,783
学習を発展させるとき──知識を応用するとき──学習は統合されていく。専門知識がより豊かな知識体系の一部になるのだ。知識を応用すると、そのテーマを全体の一部として理解することができる。 

位置: 2,789
分析とは、科学(予想する) と技術(たくさんの定石がある) の混合であるのがわかるはずだ。

位置: 2,811
シミュレーションに効果があるのは知識を応用する手段となるからである。アイデアや概念をより総合的な形でなぞってみるのを助けてくれるのだ。

人に教えるという学習方法

位置: 2,834
研究者の世界では「プロテジェ効果」と呼ばれるが、これも実は知識応用の一形態である。あるテーマについて人に教えることで、私たちはその概念に自分なりの解釈を加える。そのテーマの何が重要かを明確にし、自分の言葉に直すことによって、専門知識を深めるのである。

位置: 2,846
教えることのもう一つ大事な点は、教えるという行為の社会性である。教えるとは情動に訴える活動だ。人に教えるとき、私たちは価値や意味、情熱や喜びについて考える。 

 不確実性の価値 

位置: 2,895
知識領域の拡大にはある種の創造性が求められるのだ。はっきりと定義されないものや不確実性を受け入れる感性が必要である。実際に、専門知識の領域を不確定であいまいな、発見や探求の余地があるものだと考えている人ほどよく学べるという研究結果もある。 

位置: 2,929
加えて、人が様々な違いに敏感になるには多少の後押しが必要だとも言う。例えばランコの研究室で行った実験では、被験者はもっと型にとらわれない学習をするように言われると、もっと型にとらわれない学習をするようになる。「『あなた独自のアイデアを考えなさい』と言うだけで変わることが多いのです」とランコは言う。

位置: 2,945
心理学者のキース・ソーヤーはこのアプローチについてわかりやすい考え方を持っている。微妙な差異を見つけ出すには、問題を「引き伸ばし」たり、「圧縮し」たりすべきだという。引き伸ばすとは問題を抽象化すること。そうすると解決しやすくなる。問題を圧縮するとは具体化すること。そうすると別の洞察が得られやすい。

「多様性は人を賢くする」

位置: 2,995
「外見が自分と異なる人々が周囲にいると、他人の行動の合理性を無批判に信じなくなります」

位置: 2,997
民族的な多様性は懐疑心をもたらすことによってクリティカル・シンキングを促す。 

疑問の大切さ

位置: 3,054
人は確実性を好む。確実性には着慣れたコートのような安心感がある。一定の事実情報を学ぶほうが簡単だ。ノウハウなら受け入れやすい。「答えだけ教えてください」とつい言いたくなる。 

位置: 3,068
つながりを作るために「なぜ」を問う質問をたくさんしよう。学ぶ対象を五感でしっかりつかみ、その複雑さを味わうために、知識は必ず応用しよう。知識を本当に自分のものにするために、人に教えてみよう。また、議論を恐れてはいけない──推論の力を伸ばすことによって学びはさらに豊かになる。


第五章 関係づける

位置: 3,101
本章では、ある専門分野内の関係性を探すことによって学びを得る方法に迫る。


システム思考

位置: 3,120
概念の構築や問題解決や批判的思考の実践には、専門知識分野の中のパターンを理解しなければならないと論じている。

位置: 3,132
学習効果を上げるには関係性を考える、これに尽きます」

 「最大の認知上の障害」

位置: 3,216
表面的な特徴をさまざまに変えた多種多様な復元抽出問題に取り組むと、核にある概念を理解しやすくなる。深部にある体系についてよく理解できるようになるのだ。

位置: 3,226
練習には変化をつけ、反復を避けるべきだ。「いちばん良くないのは同じ練習を複数回、連続して行うことです。これは絶対に避けなければなりません」。心理学者のネイト・コーネルは私にそう話してくれた。「長時間の練習はかまいませんが、繰り返しはいけません」 

位置: 3,239
複合的な学習の利点はある体験の直後に別の体験をするところにある。だから新雪の斜面を滑ったすぐ後に凍結した斜面を滑るべきだ。 

仮定思考

位置: 3,268
思考実験は仮定とそれほど違わないものである。

位置: 3,278
難しい問題に取り組むときには自分自身に「もし~だったら」という問いかけをしよう。もしもっと時間があったらどうなるか? もしもっと人員がいればどうなるか? もしもっとリソースがあればどうなるか? 答えがしばしば発想を刺激してくれ、問題がどのように体系の一部に組み込まれているかに気づかせてくれる。 

 ハッキング

位置: 3,334
学習プロセスにおいて関係づけの段階では、徹底した実験が、専門知識分野の根底にある体系を理解する方法として効果的だ。 

位置: 3,338
ハッキングの鉄則は「作る、テストする、デバッグする、変更点を文書に残す」だ。

視覚的アプローチ

アナロジーの価値

位置: 3,510
何かを理解するためにアナロジーを使う際は、二つの事物ないし概念の類似性が的確にわかるように見せなければならない。腫瘍の問題で言えば、類似した二つのものを並べるのは無理でも連続して示すと問題が解けやすくなる

位置: 3,528
アナロジーはカテゴリーの理解に役立つのである。アナロジーのおかげで私たちは集合について考え、何が集合を構成しているかを考える。 

位置: 3,597
どんな概念もその中心には比較があり、比較から論理が形成される。認知科学者のダグラス・ホフスタッターが述べているように、アナロジーは「思考の燃料と火」の役割を果たすのである。

位置: 3,601
過度な一般化はよくある誤りで、弱いアナロジーを過剰に適用したケースである。

問題解決のスキル

位置: 3,620
問題解決のスキルが重要な理由は二つある。第一は問題解決そのものの重要性で、私たちは課題を解決するために学習してスキルを身につけることが多い。第二に、関連づけのできた専門知識があれば、問題解決力は上がる。体系を理解していれば、さまざまな文脈で知識を活用できる。問題解決とはとどのつまりアナロジーを利用した推論の一種と言えるのだ。

位置: 3,640
診断とは要するにつながりを探すこと、すなわちパターン認識だ。「診断とは往々にしてマッチング行為なのです」と彼は言う。 

位置: 3,676
問題解決は学習とよく似ていて、これもまたプロセス、メソッド、アプローチである。 

位置: 3,684
ポリアは問題解決法に関心を向けた。あらゆる問題に対する「解決の動機と手順」を明文化しようと志し、ついに四段階に分かれた体系的なアプローチを提案した。

  • 第一段階:「 問題を理解すること」。この段階では、問題の核心や本質の発見に努めなければならない。「問題を理解しなければならない。未知のものは何か? どんなデータがあるか?」
  • 第二段階:「 計画を立てること」。ここでは問題に対する取り組み方を計画する。「データと未知のもののつながりを探せ」
  • 第三段階:「 計画を実行すること」。行動し、検討する段階である。「計画が正しいと証明できるか?」
  • 第四段階:「 振り返ること」。つまり解決法から学ぶこと。「結果および結果に至った道筋を見直すことにより、自分の知識を強化して問題解決能力を伸ばすことができる」

位置: 3,718

問題解決には他にも重要な技法がある。自分自身に問いかけを行う人のほうがそうしない人よりも問題解決力が高いと示唆する研究結果が出ている。

位置: 3,722
優先順位づけも重要だ。 


第六章 再考する

位置: 3,756
過信は効果的な学習をおおいに阻害する。自分を過信していると、人は勉強しない。練習しない。自分に問いかけを行わない。過信はとりわけ、知力を鍛えるタイプの学習に取り組む邪魔をする。


過信

位置: 3,794
私たちは実際よりも自分がよく知っていると思い込みやすいのである。 

位置: 3,801
このような過大評価にはそれなりのメリットがある。多少の過信がなければ、本を書いたり研究成果を発表したりする人は誰もいなくなるだろう。自信はモチベーションにもつながる。例えば入試面接で自分のGPAを実際より高く申告した大学生は、正直に申告した学生より入学後の成績が向上した。

位置: 3,808
学習 で起こる過信の一つの要因は慣れだ。

位置: 3,824
あまりに簡単に学んだテーマは、忘れるのもまた簡単

位置: 3,825
TEDトークのきわめて洗練されたアプローチについてはどうか。動画が巧みな手法で製作されているのがそんなに問題だろうか。ところが皮肉にも、動画の出来の良さがかえって学習の妨げとなるのだ。これを学習の「二重の呪い」と呼ぶ心理学者もいる。つまり自分がわかっているかどうかがわからないとしたら、わかっていない場合もそれがわからないわけで、当然ながら簡単に見えるものを人は勉強しようとしない。単純でわかりやすく見えるものに対して、人はあまり努力しない。

位置: 3,830
学習における過信の第二の重要な要因、すなわち過去の実績である。以前に体験したことは学習の判断に影響を与えがちだ。化学のテストで常に優秀な成績をおさめていたら、たとえ次の試験が前の試験よりずっと難しいかもしれなくても、試験勉強をしない可能性が高い。 

直感型思考と熟慮型思考

評価する必要性

位置: 3,933
特定のスキルを身につける際、私たちは自分自身に次の問いかけをしなければならない。「よくわからないと思えるところはないか? 不明な点はどこか? 自分がわかっていることはどうすればわかるか?」

位置: 3,935
カーネギーメロン大学のマーシャ・ラヴェット教授は講義の後で学生に一問か二問の課題を与えることがよくある。この質問をラヴェットは「仕上げ」と呼んでいる。授業の一環として、学生に「自分は何を学んだか? 理解しづらかったのはどこか? わからないと思えるのはどこか?」と自問させるのである。

位置: 3,940
ラヴェットが推奨するのは最も学習しづらい部分に学生の意識を向けさせることだ。ラヴェットの言う「いちばん手こずるポイント」に意識を集中することで、学生が学習から得るものは大きくなる。「『自分はどれだけこれがわかっているだろう?』『わからないと感じるところはどこだろう?』と考える思考習慣を身につけるということなのです」

位置: 3,963
専門知識の習得は意識的に行わないと発展しないことは、えてして忘れやすい。私たちはみな自問しなければならない。「自分はどうやってわかったのか? 何をわかっているのか? 知っていることを確認したか?」

 

自分に分かっていないことを知る

位置: 4,000
専門家であっても自分がわかっていること、わかっていないことをつぶさに見直すといっそう学びを得られるのである。フィードバックと同様、このような評価もすぐに行わなければならない。

位置: 4,004
評価の種類にはもう一つ、小テストがある。これも自分がわかっているかどうかを知る手段となる。心理学者のリーガン・グルンのような学習の専門家は学生にたえず「自己テストをしなさい、教科書の巻末にある質問に答えなさい、模擬試験を受けなさい、できるだけ小テストする機会を持ちなさい」と呼びかけ、この事実を意識させている。グルンによれば効果はすぐに現れる。 

分散学習

位置: 4,057
学習の間隔をコントロールすることによる効果は非常に大きく、成果の向上が明らかに期待できるので、分散効果が発表された直後から、心理学者らは教育者に活用を促してきた」

位置: 4,109
世間一般では集中学習があいかわらず幅を利かせている。分散アプローチは普及しておらず、程度の差はあれ人は詰め込み式の学習をしている。 

 内省の必要性

位置: 4,165
一般論として人は直感に従いたがるのだ。サッカーのゴールキーパーと同様に、人はいつまでも煮えきらない、優柔不断である、考えすぎると思われるのをよしとしない。しかし逆の事実を示すエビデンスが多数ある。たいていはテストの答えを修正したほうが得点が高くなる。もう一度答えを考え抜くと、総じて成果は向上する。 

位置: 4,168
熟慮は学習に欠かせないことがわかっている。何であれスキルや知識を理解するためには、そのスキルや知識について内省しなければならない。

位置: 4,170
その経験について考え抜くということだ。

位置: 4,180
内省を書きとめるのは気まぐれでやっていることではない。書くという行為は思考を減速させ、熟考を促す。学習の質を上げる

位置: 4,192
内省とは自然にできるもので、学ぶ対象を目の前に置けばそれを学びに変えることができる、と人々は素朴に考えがちだとアンブローズは語った。「大学の教育課程でよくありますよね」とアンブローズは言った。「教員は自分の専門に思い入れがありますから、学生にできるかぎり多くの教材を与えます」  

 しかし学習はそれではうまくいかない。人にはスキルや知識について、集中して考え抜く時間が要る。アンブローズが話してくれたように、「知識を得れば得るほど、それらにつながりを作る必要が出てきます。それを意識的に行う必要があるのです」。  

静かな時間

位置: 4,206
内省には心静かな時間が必要だ。無言で書き物をしたり、シャワーを浴びながら考え事をしたりすることはあるだろう。だが集中した熟考に取り組むためには頭の中を落ち着いた状態にすること、静かな内省の時間が必要になる。

位置: 4,212
内省には自分の学びについて再考する機会以上の効果がある。熟考そのものにも教育効果があるのだ。この観点からは睡眠も興味深い例で、私たちは睡眠のおかげで自分の思考を理解することがわかっている。

位置: 4,223
頭の中に感情があふれているときは物事に取り組めない。熟考ができない。たしかに、いざという大事な場面で、電話番号のような基本的な情報を覚えることはできるかもしれない。

位置: 4,235
「学生には内面に分け入って一種の内省ができる時間と機会とスキルと励ましが必要です」

位置: 4,243
内省的な活動はメタ認知にも非常に役立つ。静かなひとときを過ごした後は思考について思いを巡らすことがうまくできるようになる。短時間の休息でもメタ認知スキルは向上する。

 「こぶし」実験

位置: 4,276
サラ・ヘラーら研究者が指摘するように、「こぶし」実験にはBAMプログラムの目的が集約されている。その目的とは、立ち止まって考えれば、人は自分の求めるものをもっと手に入れやすくなると伝えることだ。BAMで「 ゆっくり考える」という名称で広く知られるこの考え方はまさにイモーディノ=ヤンの研究の実践と言える。熟考を覚え、情動を抑制し、心を穏やかにすることで、人はもっと上手に意思決定をし、より多くを学べる。 

位置: 4,301
「行動をよしとする先入観は学習には有害である」というのが研究者らの結論だった。

位置: 4,302
スロー・シンキングに取り組むのはそう難しいことではない。かなりの集中力を要する学習タスクに取り組む前には、まず不安を追いやる工夫をすべきだ。BAMプログラムにいくつか有効なアドバイスがあるが、例えば呼吸を数えるだけでもよい。

位置: 4,305
瞑想も考えてみてほしい。瞑想も思考を減速するのに役立つ。瞑想の熱心なファンは意外な人物も含め、いまや大勢いる。 

位置: 4,310
一人になる時間も有効だ。一人で過ごすことによって思考の速度が抑えられるので、さまざまな角度から熟慮したり、推論能力を研ぎすませたり、ただひたすら自分の思考について考えることができる。

位置: 4,313
どのアプローチを取るにしても、重要なのは時間だ。内省的な思考に取り組むためには、考えたり、書いたり、ただ思いを巡らせたりするための邪魔の入らない長い時間が必要である

無限のプロセス

位置: 4,327
再考は学習プロセスの核心であり、この考え方は次第に現代の世の中に広まりつつある。専門知識はたえず進化していく。スキルも一度習得すれば終わりというものではなくなった。

位置: 4,344
携帯電話は「あるだけで」集中力を減退させることがわかっている。

位置: 4,348
概念やスキルはシンプルな形で取り組んだほうが成果は高いことを多数の実験が実証している。

位置: 4,363
テクノロジーの利用に関する最後の要点は、学びを求めよ、意味を見いだせ、ということだ。常にスキルおよび知識の開発と内省をめざしてほしい。

位置: 4,371
自分を一新させなければならない。その努力に終わりがあると思ってはならない」


エピローグ

位置: 4,442
目標設定が知覚、関係づけが理解にほぼ相当するのがわかるだろう。いずれの概念も習熟をめざすためのものだ。 

  • 価値を見いだす
  • 目標を設定する
  • 能力を伸ばす
  • 発展させる
  • 関係づける
  • 再考する

位置: 4,460

目的や目標を定めず、自分が何の能力を伸ばそうとしているかをあまり自覚しないままスキルの向上に励もうとする人があまりにも多い。

位置: 4,461
学習とはプロセス、メソッド、体系であり、こうしたプロセスを踏んでこそ専門知識が習得できるという考え方だ。学習の方法を心得れば、どんな分野でも専門知識を磨くことができる。頭を働かせ、戦略を立て、熟考し、練習して発展させ、関係づけと再考を行えば、習熟度を高めていくことができる。

位置: 4,473
ジマーマンが力を込めたのは、学習の方向づけを行う必要性だった。人は誰でも「自分なりの学習プロセスの主体」にならなければならない、と彼は主張した。本書でこのことを十分に伝えられていればと私は願っている。 

位置: 4,479
(「学習と記憶に関する研究からわかった、最も重要度の高い具体的かつ応用可能な原則に関する共通見解」)小テストの価値を力説し、分散学習の大切さを論じていた。「説明を求める質問」の多用や、別々の事例の間に「つながり」を見いだす重要性を説いていた。

位置: 4,500
彼らは頭を働かせる「活動」の重要性を強調した。「単にテキストを読み返すだけではいけません」とデローリエは説いた。「自分なりの説明を考えて、学習目標の『実行』をめざしなさい」。学生との面談で、デローリエは計画と目標を立てることにも触れ、「対象を絞り込んで、具体的な学習目標を立てて能力を伸ばす」 

位置: 4,527
学習支援に必要なのはアドバイスだけではない。本やハウツーガイドや多少の練習だけで終わらせてはいけない。私たち誰もが学習プロセスをマスターしなければならないのだ。私たち誰もが、学び方を学ばなければならない。 


ツールキット

学生のみなさんへ

位置: 4,535
価値を見いだす
学習に自分との関連性を探し、専門知識を自分にとって意味のあるものにする方法を見つけ出そう。

位置: 4,540
テキストを読み直したり蛍光ペンを引いたりといった受け身の学習法は使わないでほしい。自分で自分に問題を出したり説明をするといった能動的な学習法を使おう。テキストの内容を本気で覚えたかったら、体で覚える。概念を本気で理解したかったら、自分の言葉で説明してみる。

位置: 4,543
一つ例を挙げると、「反復」という手法もある。今度込み入った指示を出されたら、一手間かけて、言われたことを自分の言葉で繰り返してみてほしい。内容を自分なりに要約したときに、知識の創造という手順を踏むので、情報を記憶しやすくなるはずだ。 

位置: 4,546
目標を設定する。

初期の段階においては、集中が重要だ。どんなスキルを学びたいのかを厳密に見きわめなければならない。学習を一種の 知識の管理 と考えてほしい。学習目標は漠然とした願望であってはならない。あまりに高望みした学習目標は逆効果だ。漠然としすぎ、遠すぎるからだ。これは私たちの情動的な面を無視した目標である。それよりも、達成しやすいベンチマークを設定したほうが成功の確率が上がる。「ワルツを覚える」ではなく、「週一回ワルツのレッスンに参加する」、といった達成しやすい小さな目標を設定するべきである。

位置: 4,554
今までよりも少しだけ難しいことに挑戦してほしい。

位置: 4,560

知識とスキルを伸ばす。 

位置: 4,562
自分の知識を記憶から取り出す練習(検索練習) をするようにしよう。

位置: 4,566
もう一つとても大事なのがフィードバックだ。自分がやっていることの何が正しくて何が間違っているのかは知っておくべきで、パフォーマンスを観察するだけでも成果が高まる可能性がある。 

位置: 4,577
専門知識を発展させる。

位置: 4,578
スキルと知識に肉付けし、スキルを発展させることによって多くを得ることができる。

位置: 4,580
自分で自分に概念を説明したり、質問したりするのも学びが多い。 

位置: 4,583
こうした学習アプローチは知的な苦労をともなう。時間と努力とがんばりを要するため、感情面への支援が不可欠だ。どれだけささやかであっても、進捗を測って達成をねぎらうとよい。 

位置: 4,585
関係づけのスキル。 

位置: 4,588
専門知識分野内の関係性を検証するような質問を自分にしよう。この分野に潜む体系は何か? 本質的な因果関係は何か? アナロジーになりそうなものはないか? この情報を自分にとってどう価値あるものにできるか?

位置: 4,594
コンセプトマップも専門知識体系の中にあるつながりを発見する方法として効果的だ。

自分の理解を再考する。

位置: 4,605
内省も必要だ。自分が学んだことについて考えるのである。具体的には、自分にこう問いかけよう。「自分の考え方は変わったか? この教材の内容は全体としてどうつじつまが合うのか? 自分が学んだのは何で、次は何を学ぶ必要があるのか?」 

親、先生、上司の皆さんへ

位置: 4,612
学習者には支援が必要だ。専門知識の習得をめざす人を親、先生、上司の立場で支援する方法をいくつか下記に示す。 


期待値を示す。
学習中の人には褒め言葉を惜しまず、励ましを与えるべきである。

位置: 4,616
ただし結果ではなくプロセスに注目し、相手のモチベーションを維持するようにしよう。具体的には「頭がいい」という言葉を使わない。頭の良さを褒められると人は往々にしてそのことにあぐらをかいてしまい、能力以下のことしかしなくなる、とキャロル・ドゥエックは言う。成果ではなく過程を褒めよう。「あなたのがんばりはすばらしい」、「これからが大変でしょう」、「その調子でがんばって」

位置: 4,621
相手に期待することを話そう。学習の成功モデルを示すことも大切で、苦労に対処し失敗を克服する上手な方法を教えるようにしよう。ミスしたら自分にも周りにも「すばらしい学びのチャンスだ」と言おう。 
分散する。

位置: 4,625
生徒には数週間ないし数カ月の幅で学習を分散させることを奨励しよう。

位置: 4,628
宿題も同様で、一晩あるいは週末だけで一気にやるより、時間をかけて分散して取り組んだほうが効果が高い。
集中力を高める。

位置: 4,635
プレゼンは情報量が少ないほど効果が高い。情報が多すぎると、受け手のワーキングメモリーが容量オーバーになってしまう。プレゼン用のパワーポイント資料を作成する場合は、スライドに図を詰め込みすぎないようにしよう。スライド一枚に入れるメッセージは一つにしよう。

位置: 4,638
聞き手が聞き逃すことを想定して何度も繰り返そう。 

ミスをサポートする。

位置: 4,640
失敗は、うまくいかなかったと思う部分を理解するのに役に立ち、また、ミスによって記憶に残り学習が進むからである。

位置: 4,645
「親の仕事は子どもを不安な状態、答えがわからない状態に慣れさせることです」と研究者のリサ・ソンは言う。「長期的な学習力を最大化するためには、自力で学ぶ必要があるんです」

アナロジーを使う。
見直しを促す。

位置: 4,660
学生の過信を防ぐため、カーネギーメロン大学のマーシャ・ラヴェット教授は講義の後で一問か二問の課題を学生に与えることがよくある。この質問をラヴェットは「仕上げ」と呼んでいる。授業の一環として、学生に「自分は何を学んだか? 理解しづらかったのはどこか? わからないと思えるのはどこか?」と自問させるのである。

位置: 4,665
推奨するのは最も学習しづらい部分に学生の意識を向けさせることだ。ラヴェットの言う「いちばん手こずるポイント」に意識を集中することで、学生が学習から得るものは大きくなる。

読書メモ18

 

具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ

具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ

 

 

はじめに

33:「抽象」を扱う方法を、「具体」との対比で「わかりやすく」解説するのが本書の目的です。ただしその「わかりやすさ」は、具体の世界でいうわかりやすさとは違います。

序章 抽象化なくして生きられない 

106:本書の目的は、この「抽象」という言葉に対して正当な評価を与え、「市民権を取り戻す」ことです。 

 

第1章 数と言葉 

147:言葉と数を生み出すのに必要なのが、「複数のものをまとめて、一つのものとして扱う」という「抽象化」です。 

第2章 デフォルメ 

第3章 精神世界と物理世界 

第4章 法則とパターン認識 

244:抽象化とは複数の事象の間に法則を見つける「パターン認識」の能力ともいえます。

 第5章 関係性と構造 

第6章 往復運動 

291:「たとえ話」は、説明しようとしている対象を具体的につかんでもらうために、抽象レベルで同じ構造を持つ別の、かつ相手にとって卑近な世界のものに「翻訳」する作業といえます。説明したい新しい概念や事例を、身近な事例で似ているもの使って説明するのです。

294:たとえ話のうまい人とは「具体→抽象→具体という往復運動による翻訳」に 長けている人のことをいいます。 

第7章 相対的 

341:手段と目的の関係も、すべて相対的なものです。目的一つに対して手段は複数という形で階層が成立しますが、目的にはつねに、さらに抽象度の高い「上位目的」が存在します。 

第8章 本質 

372:つまり「抽象度のレベル」が合っていない状態で議論している(ことに両者が気づいていない)ために、かみ合わない議論が後を絶たないのです。

393:世の「永遠の議論」の大部分は、「どのレベルの話をしているのか」という視点が抜け落ちたままで進むため、永遠にかみ合わないことが多いのです。

419: 「本質をとらえる」という言い方がありますが、これもいかに表面事象から抽象度の高いメッセージを導き出すかということを示しています。 

第9章 自由度 

446:先人の「名言」は、抽象度が高い表現ばかりです。 

第10章 価値観 

502:実際は、組織の職場環境はおおむね「下流」の考え方に最適化されています。それは前述のとおり「仕事の量も人数も多く、万人にわかりやすいもの」が求められるからです。

509:価値観の違いに関しては、「質の上流 vs 量の下流」という視点もあります。 

第11章 量と質

536:「よい法則」の一つの絶対的な条件は、「適用できる範囲が広い」ということです。つまり「一を聞いて十を知る」ことができる法則よりは「一を聞いて百を知る」ことができる法則のほうが、よりよい法則ということになります。 

第12章 二者択一と二項対立 

*この章に関しては、わかりにくかった。「項」と「者」の違いがわかりにくい。「項(抽象)、「者(具体)」ということなのか?具体と抽象、本書を通して出てくる三角形の説明に無理に当てはめてる感があって、この章だけは理解しにくかった。「二項対立」という言葉自体に白黒はっきり分ける態度という意味が含まれていると思うので、これを「アナログ的な考え方」と言えるのか?座標軸を提示するような見方は「二項対立」的ではないわけで、具体と抽象の話とは少しずれる気がして、読んでてしっくりこなかった。

第13章 ベクトル 

587:哲学、理念、あるいはコンセプトといった抽象概念がもたらす効果は、個別に見ているとバラバラになりがちな具体レベルの事象に「統一感や方向性」を与えることであり、いわばベクトルの役割を果たしているのです。

599:個別の行動の判断に困ったときの拠り所となるのも、「最終的に何を実現したいか?」という長期的な上位目的です。「枝葉を切り捨てて幹を見る」という、抽象化の考え方がここで生きてきます。 

第14章 アナロジー 

620:アナロジーとはいわば「遠くからアイデアを借りてくる」ための手法といえます。

625:アナロジーとは、「抽象レベルのまね」です。具体レベルのまねは単なるパクリでも、抽象レベルでまねすれば「斬新なアイデア」となります。ここで重要になるのが、第5章で述べた「関係性」や「構造」の共通性に着目することです。 

第15章 階層 

第16章 バイアス 

682:ルールや理論、法則は、大抵の場合は具体的に起こっている事象の「後追い」の知識だったはずです。ところが、一度固定化された抽象度の高い知識(ルールや法則等)は固定観念となって人間の前に立ちはだかり、むしろそれに合わない現実のほうが間違いで、後付けだったはずの理論やルールに現実を合わせようとするのは完全な本末転倒といえます。 

第17章 理想と現実 

第18章 マジックミラー 

785:「見えている」側に立ったときに、「見えていない相手」にどのように対処すべきか、ということです。これは「見えている人」(見えてしまった人)が持つ、共通かつ永遠の悩みといえます。 

第19章 一方通行 

847:状況と相手に応じてちょうどよい抽象度でコミュニケーションすることが重要です。「抽象的だからわかりにくい」ということがクローズアップされがちですが、じつは「具体的すぎてわかりにくい」こともあるのです。 

第20章 共通と相違 

866:他人や他社の成功なり失敗なりが本質的に何に起因しているのか、抽象度を上げた特性を探り当てることです。 

終章 抽象化だけでは生きにくい

読書メモ17

 

実践 行動経済学

実践 行動経済学

 

 

 

はじめにーー「自由放任」でも「押しつけ」でもなく

163
「人は一般に自分がしたいと思うことをして、望ましくない取り決めを拒否したいのなら、オプト・アウト(拒絶の選択)する自由を与えられるべきである」──。このストレートな主張がわれわれの戦略のリバタリアン的な側面

172
「人々がより長生きし、より健康で、より良い暮らしを送れるようにするために、選択アーキテクトが人々の行動に影響を与えようとするのは当然である」──。これがわれわれの戦略のパターナリズム的な側面である。

174
政府も自覚的な取り組みを進めて、人々が自分たちの暮らしが良くなるような選択をするように誘導するべきだと主張しているのである。

189
われわれの言う「ナッジ」は、選択を禁じることも、経済的なインセンティブを大きく変えることもなく、人々の行動を予測可能な形で変える選択アーキテクチャーのあらゆる要素を意味する。純粋なナッジとみなすには、介入を低コストで容易に避けられなければいけない。ナッジは命令ではない。果物を目の高さに置くことはナッジであり、ジャンクフードを禁止することはナッジではない。

第1部 ヒューマンの世界とエコノの世界


第1章 バイアスと誤謬

利用可能性

587
悪い結果になるのではないかという人々の不安を高めるには、それと関連のあるうまくいかなかった出来事を思い出させるとよいし、人々の自信を高めるには、すべてが最高にうまくいった同じような状況を思い出させるとよい。

現状維持バイアス

780
デフォルト・オプションは強力なナッジとして作用する。数多くの文脈で、デフォルト・オプションはナッジとしてとりわけ強い影響力をもつ。


第2章 誘惑の先回りをする

882
コールド状態にあるときには、興奮の「影響下」にあるときに自分たちの欲求や行動がどれくらい変わるかなど意識しない。

896
いる。脳には誘惑にかられる部位もあれば、その誘惑にどう反応すべきかを評価して誘惑に抵抗できるようにする部位もある。

901
様々な状況で人は自分を「自動操縦」モードに押し込む。これは目の前にある課題に能動的に注意を払わない状態である(自動システムはこの状態だととても居心地がよい)。


第3章 言動は群れに従う

1,148
社会的影響力は二つのカテゴリーに大別される。第一のカテゴリーは「情報」である。大勢の人があることをしたり、考えたりする場合、その行動や思考はあなたがどうしたり、どう考えたりするのが最善なのか、という情報を伝える。第二のカテゴリーは「仲間からの圧力」(ピア・プレッシャー)である。

1,231
重要な点として、最初の判断は〝世代〟を超えて影響を与えることも明らかになった。

 1,307
実験の教訓はこうだ。人はあなたが思っているほどあなたを注意して見ていない。シャツに染みがあっても気にしなくてよい。たぶん誰も気づかない。しかし、人は誰もが自分のことを注視していると考えている。それが一因で、人々があなたがそうすると期待しているだろうと思うことに同調するのである。

1,329
あのミュージシャンや俳優、作家、政治家が成功したのはスキルや資質を考えれば当然だと考えたがる。その誘惑には気をつけなければならない。重要な局面で起こる小さな介入や、場合によっては偶然でさえ、結果を大きく変えることがある。

1,374
いる。広告では、自社製品を「ほとんどの人が選んでいる」とか、別のブランドから切り替える人が「増えている」としきりに強調される。それは過去の情報だが、広告会社にとっては未来を表すものとなる。ほとんどの人がいまどうしているかを伝えることによって、あなたをナッジしようとしているのだ。

1,412
あなたの隣人が「○○株を買っても損はしない」と話したら、その投資から手を引く絶好のサインになるだろう。

1,432
投票者を増やしたいと考えているなら、投票しない有権者がたくさんいると嘆かないでいただきたい*)。

1,486
社会的に望ましい行動にナッジしたいなら、現在の自分たちの行いが社会的標準レベルよりも良いことを絶対に知らせてはならない。

1,534
人々を特定の方向に押し動かそうとするより、小さな障害をとり除いたほうが効果的である場合が多い。

1,558
「情報」「仲間からの圧力」「プライミング」という社会的影響力は、民間部門、公的部門のナッジに簡単に利用できる。これから見ていくように、企業も政府も、社会的影響の力を使って様々な良い目的(そして悪い目的)を追求できる。


第4章 ナッジはいつ必要なのか

1,566
「役に立つ可能性が最も高く、害を加える可能性が最も低いナッジを与える」。これをリバタリアンパターナリズムの黄金則と呼ぼう。

1,585
自制心の問題が生じる可能性が最も高いのは、選択と結果にタイムラグがあるときだ。

 1,632
修得する可能性が最大になるのは、やってみるたびにすぐに明確なフィードバックが返ってくるときである。

1,672
良いナッジが最も求められているのは、選択の結果が遅れて現れる場合、選択するのが難しく、まれにしか起こらず、フィードバックが乏しい場合、選択と経験の関係が不明瞭な場合ではないかと思われる。


第5章 選択アーキテクチャ

デフォルト

1,839
最も労力を必要としない選択肢や最も抵抗の少ない経路だったらどんなものでも選ぶ人は多い。

良い選択アーキテクチャーを作る6つの原則(2,170)

  • iNcentives(インセンティブ
  • Understand mappings(マッピングを理解する)
  • Defaults(デフォルト)  
  • Give feedback(フィードバックを与える)  
  • Expect error(エラーを予期する)  
  • Structure complex choices(複雑な選択を体系化する)

第2部 個人における貯蓄、投資、借金


第6章 意志力を問わない貯蓄戦略
第7章 オメデタ過ぎる投資法
第8章 “借金市場”に油断は禁物

2,924
第8章では様々なトピックを取り上げたが、通底するメッセージはシンプルだ。住宅ローンとクレジットカードの世界は必要以上に複雑化し過ぎており、人々が搾取されるおそれがある。

2,927
政府は選択の自由をおおむね尊重するべきである。しかし、選択アーキテクチャーを少し改良すれば、人々がまずい選択をする危険性はずっと小さくなるだろう。

 

第3部 社会における医療、環境、婚姻制度


第9章 社会保障制度の民営化――ビュッフェ方式

3,156
「重要な意思決定をするのが難しくて不慣れな場合、そして、人々がエラーをしたときに即座にフィードバックを得られない場合には、ちょっとしたナッジを与えることは理にかない、適切ですらある」

3,178
たくさんの選択肢を与えるのはたいていは良いことだ。しかし、問題が複雑に入り組んでいるときには、良識ある選択アーキテクチャーを構築することで人々を正しい方向に導ける。


第10章 複雑きわまりない薬剤給付プログラム
第11章 臓器提供者を増やす方法
第12章 われわれの地球を救え
第13章 結婚を民営化する

4,065
結婚を民営化すれば、この問題が解消される。 このアプローチでは、国がカップルに与える法律上の地位は「シビル・ユニオン」と呼ばれる形態だけになり、シビル・ユニオンは、異性間、同性間を問わず、二人の人間の間の家族的パートナーシップ契約になる*。

4,151
歴史的に見ると、公的な結婚制度の主な目的は、入り口を制限することではなく、コミットメントを互いに破棄しにくいようにして、出口を管理することだった。

 

第4部 ナッジの拡張と想定される異論


第14章 一二のミニナッジ
第15章 異論に答えよう
第16章 真の第三の道

4,879
本書では二つのことを強く主張してきた。第一に、社会的状況の一見すると小さな特徴が人々の行動に非常に大きな影響を与えることがあり、私たちの目に見えなくても、ナッジはどこにでもある。選択アーキテクチャーは、良いものも悪いものも、広く浸透し、避けることができず、私たちの意思決定に強く影響する。第二に、リバタリアンパターナリズムは撞着語法ではない。選択アーキテクトは、選択の自由を守りながら、人々の生活が良くなる方向にナッジできる。

 

あとがきーーヒューマン投資家と二〇〇八年金融危機

 

 

 

読書メモ16

 

 目次

まえがき

細かく厳密な議論よりも、まずは「ゲーミフィケーション」という現象がなにであるかを示すことを目的としている。(80)

ゲーミフィケーションはゲームの考え方やデザイン・メカニクスなどの要素を、ゲーム以外の社会的な活動やサービスに利用するものとして定義される。

こうして、2011年に「ゲーミフィケーション」という言葉はウェブ2.0マッシュアップクラウドフリーミアム…これらに続く新しいテクノロジーの流行語に登録された。

バッジやレベルを設定するだけでゲーミフィケーションになると言うつもりはない。

 1 ゲーミフィケーションとは何か

ソーシャルはゲームへ

明確なゴールの設定はゲームを昨日させるうえでもっとも使いやすいテクニックの一つだ。(227)

ゲームソフトというパッケージは「ゲーム」という現象を機能させるためのメディアに過ぎず、「ゲーム」という現象そのものは、私たちの日常に遍在している。

ただし、「ゲーム」という現象は「物語」よりも少しやっかいだった。口では簡単に伝えられないし、同じ「ゲーム」を再現するためには、ゲームプレイヤー同士の実力がある程度まで拮抗していることが必要だ。

そして、「ゲーム」はソーシャルメディアよりも、一見すると社会的な意義がわかりにくいものだった。「ソーシャル」は、人間の居場所を確保したり、関係性を構築したり、社会運動を形成するパワーになるというイメージがすぐできた。

今まではそうだった。

しかし「ゲーム」を立ち上げるための条件は、この10年で大きく変わった。人にさまざまな形でフィードバックを与えることができるようになり、また以前よりもそれらを低コストでつくることができるようになった。(325)

そのテクノロジーの総体が「ゲーミフィケーション」なのである。(336)

ゲーミフィケーションの誕生

ゲーミフィケーションのかんたんな定義は「ゲームの要素をゲーム以外のものに使う」ということだったが、その言葉が含む範囲は曖昧模糊としたところがある。それだけゲーミフィケーションという概念の範囲が広いということだろう。(337)

(テレビのニュースは)

分かりやすく伝えたい「物語」を求めている。つまり、マスメディアでは「物語」があることによりニュースはスケール=拡散する。(420)

ゲーミフィケーションを考えるのであれば、一回の行動の後に、二回目、三回目、四回目…50回目の人の行動を考える必要がある。情報の拡散だけでは、人は繰り返し動かない。何度も繰り返し動くための仕組みを用意する必要があるのだ。(522)

(ソーシャルゲームは「ソーシャル」のアクティブ率を高めた)

第一の理由は、ゲームがコンピュータと結びついたことによって「コンピュータが一人遊びの相手をしてくれる」

第二の理由は「一度」で終わらないゲームというメディアの特徴にある。ゲームは何度も何度も繰り返し遊ばれるものだ。(532)

連続して、少しずつうまくなっていたり、キャラクターが成長していく。その過程こそがたのしいのだ。繰り返し遊ぶ、そのことにこそゲームの強みはある。(546)

ゲームのもう一つの特徴に「飽きる」という現象がある。ただし、この「飽きる」ことの速度も、「物語」や広告キャンペーンが消費される速度に比べばもう少しゆっくりしている(546)

飽きを極限まで少ないものに設計することもできるが、それをしてしまうと「依存」と判断がつかなくなる。(例,パチンコ)

「ゲーム」で顧客との関係性を維持する

ゲーミフィケーションという手段はやはり革新的な意味を持っている。その主たる点は、顧客に対してパーソナルに関係性を築くことができるということだ。(572)

外発的動機づけとは報酬や罰を理由に動機づけられることを指す。一方、内発的動機づけはその逆に外部からの報酬や罰によってではなく、自らの活動それ自体に動機づけられることを意味している。

この区分を理解しておくことは、ゲーミフィケーションを考えるうえでとても重要だ。ゲーミフィケーションとは、外発的動機づけとの境界線的な要素(報酬)を求めるうちに、内発的動機づけを駆動させるようなメカニズムだと言っていい。(604)

貨幣を介して行動を促進することがゲームでないとは言わない。しかし、それは貨幣を介さないゲームとは、もはや全く別物である。

たとえば、金銭による外発的動機づけで何かを成し遂げる場合、目的となる金銭が与えられれば、その「何か」は終わってしまう。(628)

「ポイント制」はゲーミフィケーションそのものではない

ゲーミフィケーションではゲームそのものをつくらなくてもいい。

例)紙コップを減らすアイデア「カルマ・カップ

潜在的にゲームであり得るものは「ゲーミフィケーション」の最も周辺、その外側に位置している。世の中にはゲームになり得るものに満ちているのだ。しかし多くのものがゲームとして形になることに成功していない。(727)


ゲーミフィケーションインパクト-ゲームがビジネスを変える

たとえば、山登りのことを考えてみてほしい。山登りは頂上まで登ったら制覇だ。もちろn、途中で登れなくなることもたくさんある。あおの頂上に至るまでの第何ポイントまで登れたかというのが、山を制覇したということの基準になっている。山登りには、ミッションのゲームに似た全体像がある。こうした全体像は「こういう手順でプレイしてクリアできる」というゲームプレイの指南そのものだ。(852)

(東海道五十三次四国八十八か所のお遍路さん)

 

ゲーミフィケーションがすすんできた理由の一つとして、利用者が日常の時間のなかのでこどえも、はやく強いフィードバックを得られるようになったということを挙げたい。ゲームにとってフィードバックは欠かすことのできないものである。

ディズニーリゾートは、顧客満足度を上げるためには従業員満足度を高めておく必要がある、との考えから、こうした形で従業員に対する満足度を高める方策を数多く行っていると言う。(1110)

ゲーミフィケーションは仕事を不まじめに、ふざけてたのしむということではない。人の本性に訴えかけて、人を動かすための仕組みだ」(1176)


ゲーム環境の拡大-空間、時間、人

2012年現在において「ゲーミフィケーション」という言葉がにわかに注目を浴びはじめ、広がりはじめた背景は、ただ単にゲームが人のさまざまな社会活動にとって効果的だということだけではない。ゲームを日常生活のなかに持ち込めるようになったというのが大きな意味を持っている(1245)

ストップウォッチは18世紀初期に発明されたが、1896年のアテネオリンピックでは、公式記録はまだ目視によるものだったという。当然、コンマ数秒の記録を測ることは大変だった。(1272)

ギネスがあれば測ることはゲームになる

「測る」テクノロジーが登場しただけで、人々はゲームをはじめてしまう。(1282)

ライフログはゲームにするとたのしい

逆に、ゲームにしやすいのは数量としてカウントしやすいものだ。ソーシャルゲームは、「友だち」の数を数値としてカウントできるSNSというプラットフォームの上でこそ、初めて機能した。

これらでゲームをつくるときに重要なのは、一言で言えば「裏が取れる」ことだ。(1352)

「測るテクノロジー」以外にも「ゲーム」が日常的に浸透するために重要な役割を果たしたことがある。それはインターネットに流れる「時間」が速くなりはじめたということだ。(中略)もっとも重要なのは「いつでもゲームの結果を確認できる」ということだ。(1428)

フィードバックの速度が遅いということや、今の自分の状態が確認できない時間が長いことは端的にモチベーションを低下させる。(1443)

 

2 ゲーミフィケーションを考える

ゲーミフィケーションの実践のために

Step1:着想

第一は、すでにある行動をベースにアイデアを着想する方法

第二は、新しくゲーミフィケーションを立ち上げる方法

ゲーミフィケーションによって何を達成したいのか、ゴールは何か。そして、導入することで何ができるのかといった点について予め考えを深めておく必要がある。(1601)

  • 関係性の強化:ゲーミフィケーションが大きな強みを持つと考えられれている分野の一つは顧客との関係性の強化や、サービスの継続性を挙げる仕組みだ。顧客との関係性を強化するためには、顧客のどういった行動を変えることが必要なのだろうか。
  • フィードバックの可視化:フィードバックを強く、はっきりと示すことは、プレイヤーのモチベーションを上昇させることに大きく貢献するだろう。
  • ハマる行動の分析:ハマるまでのプロセスのなかに、何かヒントはないだろうか。プロセスの要素を分解してみよう。

Step2 :つくりあげる

一つはプレイヤーがゲームを楽しむ順序の設計。もう一つはゲームのルールなどのメカニクスの設計だ。(1668)

コンピュータ・ゲームとボードゲームの違いを考える時、重要なのはプレイヤーがたのしむための「順序」なのだ。プレイヤーがスムーズにゲームをたのしめるかどうかがゲームやゲーミフィケーションをつくりあげるための鍵となる。「ゲームのルール」と「ゲームの魅力」の二つを、強制されていると感じさせることなく、ゲームをつくる側が意図した順序でたのしんでもらうための手法。これこそがコンピュータ・ゲームが蓄積したノウハウだ。

たのしみの「順序」をつくるための代表的な手法として「アンロック」と「レベルデザイン」の二つを見ていこう。(1727)

  1. アンロック 

 「アンロック」はゲームだけに存在する特別なものではない。かなり近い手法が教育の場でも用いられている。(中略)「アンロック」の手法は、段階的にステップアップをしていくという意味でこれと同じ考え方だ。ただし、教育とゲームでは違いがある。算数の授業では、この次にはこれを学ばなければならないといった「義務」として、新たな課題が与えられる。一方、ゲームの「アンロック」は新たに何かができるようになったとき「あなたはレベルアップして強くなったので、こんな新しいことができるようになりました」といった「獲得」として、新たな技能が追加される。

「義務」ではなく「獲得」として演出することにより、プレイヤーは徐々に自分が強くなっていったかのような感覚を持つ。「獲得」という報酬を与えることでプレイヤーをうまく誘導できる。(1751)

「アンロック」は、かんたんに言えば、まず「これがたのしいですよ」と言われてゲームが始まり、ゲームをプレイするなかでできることが少しずつ増えていく手法だ。

 2.レベルデザイン

ゲームにおけるマップのデザインを通じてプレイヤーに暗黙のうちに意図した行動を行ってもらうための一群の手法のことだ。(1786)

スーパーマリオを例に)

このように「覚え」「学び」「応用し」「極める」というマリオをジャンプさせることを学ぶプロセスは、プレイヤーに意識させることなく、マップの中に周到に順序立てて配置されている。これこそが「レベルデザイン」という手法そのものだ。

プレイヤーがゲームに対してより能動的にプレイしてゆくときの「上達の実感」や「適度な手応え」は、「レベルデザイン」という方法論によって実装されるのだ。(1815)

ゲームのルールやアルゴリズムなどをまとめて「ゲームのメカニクス」と呼ぶ。

1.ランキングを導入する

プレイヤーが「自分はプレイがうまい」と感じるような有能感の設計に失敗すると、ゲームはとたんにつまらなくなる。

2.お金の力をゲームに持ち込む

プレイヤーがお金を使った場合の効果をどこまで見せるか、また、どのように見せるかということのメカニクス調整は、かなり注意深く行われていることを知っておくべきだろう。

3.クイズを出題する

クイズがゲームとして機能することはあるのだが、クイズそれ自体がゲームになるわけではない。これは多くの教育用のゲームが陥りがちな罠である。ゲームとしてそれまでメインでたのしんできたことと無関係なものとしてクイズをやらせる場合は、そもそもプレイヤーにやる気があるかどうかがかなり微妙だ。

4.強制する

「競争させればゲームになる」と思っている人も多いかもしれない。たしかに、競争はゲームとしての要素を持っている。(中略)だが、そもそもやる気のない人や、どうやればうまくプレイできるかをわかっていない人を相手に、単に「競争しろ」と言っても競争が成り立つものではない。

様々な手法

①ほどよい挑戦の感覚をつくる仕組み

②フィードバックをより強く演出する仕組み

  • フィードバックを短くする
  • フィードバックの明示化:バッジ、レベル、ステータス
  • 錯覚的な演出:有能感を感じられるように演出する。ポジティブな情報だけを派手に通知するなどといった工夫。

③フィードバックのバリエーション

  • 緩急効果:やや難しい状況と、ややかんたんな状況が交互に繰り返すようにする仕組み
  • 音楽や映像のバリエーションの追加⇒飽きを防ぐ
  • イベントの開催

メカニクスの調整

  • 「ズル」の応用
  • 「ズル」の阻止

最後に重要になるのは、仕組みを複雑にすることではなく、何を取り入れ、何を取り入れないかを決めるプロセスだ。もっとも重要な仕上げのプロセス。それが「洗練」のプロセスである。

Step 3:洗練させる

①テストプレイ

できることならば、うまくいくかどうかを調べるためのかんたんなお試し版をつくり、まずは誰かにテストプレイしてもらうとよい。

②リリース後

プレイヤーはゲームを何かしらの「ズル」で切り抜けようとすることがよくある。あるいは、ゲームが想定しない形でプレイされてしまい、本来プレイヤーにしてもらいたいことを実際にしてもらえないということはよく起こる。

ゲーミフィケーションとその論点

ゲーミフィケーションに典型的な3つの問題を取り上げたい。設計者の偏りの問題、プライバシーの問題、そしてズルの問題だ。

①設計者の偏りーそのゲームは誰にとって楽しいゲームなのか?

大目的は焦点を絞りつつも、それを達成するための評価されるべき項目を一つにせず複数にするなど、細かい対応や工夫が求められる

②プライバシーーパブリックとプライベートの境界線はどこにあるのか?

ライフログを扱うことがおおいゲーミフィケーションではプライバシーに対する一定の配慮が必要だ。

③ズループレイヤーと設計者の目的のズレ

ゲームをリリースした後もユーザーの行動を常に追跡し、どういった「ズル」が行われるかを見つつ、ゲームの仕組みを柔軟に修正していく他ない。

多様なゲームの可能な社会へ

ゲーミフィケーションの何が新しいのかわからない。世界にはゲーミフィケーションなどという言葉を使わなくとも、すでにたくさんのゲームが日常の中に溢れているではないか」という人がいる。(中略)

間違ってはいない。たしかにゲームはすでにある。

しかし、そこにはゲームが「ある」だけだ。

われわれはそれらのgameを必ずしもたのしんでいない。積極的に、意欲を持って参加をしているわけではない。いくつかのゲームはリセットを押してやめることもできない。

ゲーミフィケーションの議論はまだ端緒に過ぎない。多くの人がゲームを選び取り設計に関わることのできる社会というものが、一個の社会像の在り方として議論される世界。これが現実味をおぼえてくる未来への第一歩を、われわれは踏み出そうとしている。(2609)

 

読書メモ15

 

失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織

失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織

 

 

 

第1章 失敗のマネジメント

「失敗との向き合い方」がすべてを決める

人間が失敗から学んで進化を遂げるメカニズムを明らかにしていく。

航空業界と医療業界のミスに対する意識の違い:強い権限を持つ独立の調査機関が存在。失敗を「データの山」ととらえる。ブラックボックスの存在。ミスの報告を処罰しない。

医療業界:「完璧でないことは無能に等しい」=失敗は脅威、事故が起こった経緯について日常的なデータを収集してこなかった。

 

どんな業界で起こるミスも一定の「パターン」がある。

極度の集中により時間間隔を失う。

上下関係がコミュニケーションを阻害する(失敗時に部下が意見を言いにくい)

 

我々は自分の失敗には言い訳するくせに、人が間違いを犯すとすぐに責め立てる。⇒誰もが失敗を隠すようになる。

人は失敗を恐れるあまり、度々曖昧なゴールを設定する。たとえ達成できなくても誰にも非難されないからだ。

クローズド・ループ現象:失敗や血管にかかわる情報が放置されたりきょっかいされたりして、進歩につながらない現象や状態を指す。その逆が「オープン・ループ」。失敗が学習の機会や進化につながる。

疑似科学の世界では、失敗することが不可能な仕組みになっている。だからこそ、理論は完璧に見え、信奉者は虜になる。しかし、あらゆるものがあてはまるということは、何からも学べないことに等しい。

失敗に対してオープンで正直な文化があれば、組織全体が失敗から学べる。

 

専門的な能力はある程度練習で身につけることができる(1万時間ルール)。それが当てはまらない職種がある。例)心理療法士、大学入学審査員、企業の人事担当、臨床心理士⇒フィードバックがない。間違いを教えてくれるフィードバックがなければ、訓練や経験を何年積んでも何も向上しない。

 

第2章 人はウソを隠すのではなく信じ込む

・なぜ人が失敗から学ぶことが困難なのか。⇒失敗を認めようとしないのか。

認知的不協和:自分の信念と事実とかが矛盾している状態。

解決策は2つ

・信念が間違っていたと認める

・事実を否定して、都合のよい解釈をつける

「隠すことなんてない」と信じる人ほど、上手にミスを隠す。認知的不協和に陥っていることを気づくのは難しい。ミスの隠蔽を一番うまくやり遂げるのは、意図的に隠そうとする人たちではなく、「自分には隠すことなんて何もない」と無意識に信じている人たち。

 

経済学者を対象に行った調査:キャリアの途中で学派を変更した者、あるいは自身の心情を大きく変更した者は全体の10%未満。⇒自尊心が学びを妨げる、組織の上層部に行けば行くほど、失敗を認めなくなる。

 

我々は自分が「実際に見たこと」より「知っていること」に記憶を一致させる傾向がある。

第3章 「単純化の罠」から脱出せよ

進化は自然淘汰によって、「選択の繰り返し」によって起こる。

頭で考えたアイデアがどれほど秀逸でも、成功のためには実際の試行錯誤が欠かせない。

試行錯誤の結果として発明やイノベーションが生まれ、それがのちに論理化、体系化される。つまるところ、テクノロジーの進歩の裏には、論理的知識と実践的知識の両方の存在があって、それぞれが複雑に交差し合いながら前進を支えている。

 

我々は知らず知らずのうちに、目に見えるものを特定のパターンに当てはめて考え、そこにあとからもっともらしい解釈を付けて満足してしまう。=「講釈の誤り」

 

時間をかけて、バグのない優秀なソフトウェアの開発「トップダウン式」

完璧主義の誤解:ひたすら考え抜けば最適解を得られるという誤解、失敗への恐怖

 

陶芸クラスで、「量」で評価するチームと「質」で評価するチームとに分けて作品を提出させると、「量」のグループが粘土の扱いもうまくなっていった。

⇒「リーン・スタートアップ(Lean startup)」⇒小さく始める

最初から完成形を目指さず、フィードバックを得ることから始める。

早期の失敗を奨励する「フェイルファスト」手法⇒失敗型アプローチ

失敗型にアプローチには物事を素直に受け入れる気持ちと、根気強さが欠かせない。

RCT(Randomized Controlled Trial)の重要性。⇒統制群の必要性

 

第4章 難問はまず切り刻め

「小さな改善の積み重ね」(マージナル・ゲイン/merginal gain)

大きなプログラムを小さなプログラムに分けて検証

 

第5章 「犯人捜しの」バイアスとの闘い

非難は、人間の脳に潜む先入観によって物事を過度に単純化してしまう行為だ。非難は我々の学習能力を妨げるばかりでなく、深刻な結果をもたらす。失敗を隠す「内因」が認知的不協和だとしたら「外因」は非難というプレッシャー。

非難や懲罰には規律を正す効果あると感会えている人は多い。⇒実際は懲罰志向のチームの方が、そうでないチームよりミスの報告は少ないが、実際に犯したミスは多い(隠ぺいしている)

「クビ」は問題を解決しない

人の行動の原因を性格的な要因に求め、状況的な要因を軽視する傾向がある。⇒根本的な帰属の誤り(Fundamental attribution error)ただし、自分のミスには出てこない。

公人に対する我々の姿勢ほど非難にあふれたものはない。特に政治家には手厳しい。⇒公人はミスに対する認知的不況を抱え、自己正当化や言い逃れを生み出す。

 

第6章 究極の成果をもたらすマインドセット

失敗は「してもいい」ではなく「欠かせない」

失敗から学ぶことを妨げる内的・外的な問題をどう乗り越えていくか。

「成長型マインドセット(growth mindset)」の重要性

成長マインドセット:知性も才能も努力によって伸びると感あげる。根気強く努力を続ければ、自分の資質をさらに高めて成長できると信じている⇔固定型マインドセット

成長型マインドセットの人は失敗への着目度が高く、学習効果との密接な相関関係がうかがえる。

彼らにとって、引き際を見極めてほかのことに挑戦するのも、やり抜くのもどちらも成長。

 

終章 失敗と人類の進化

 

ビジネスリーダーや教師ばかりでなく、我々も社会人として、また親として、失敗に対する考え方を変えていかなくてはならない。子どもたちの心に、失敗は恥ずかしいもので汚らわしいものでもなく、学習の支えになるものだと刻み付けなければならない。

「正解」を出した者だけを褒めていたら、完璧ばかりを求めていたら、「一度も失敗せずに成功を手に入れることができる」という間違った認識を植え付けかねない。

すべてを「失敗ありき」で設計せよ。

・データとフィードバックの収集

・学ぶ機会を小さい規模で作る(パイロット・スキーム)

・事前検死(pre-mortem):プロジェクトを実施する前に、失敗した状態を想定し、なぜうまくいかなかったかチームで検証する。

 

 

読書メモ14

 

 はじめに

9: 繊細な人が持つ「繊細さ」は、性格上の課題ではなく、 生まれ持った気質 の可能性が高いからです。

16: 繊細な人は、むしろ自分の繊細な感性をとことん大切にすることでラクになり、元気に生きていけるのです。

42: HSP(Highly Sensitive Person) という概念がベースになっています。 

第1章 繊細さんがラクになれる基本

139: 繊細さんは、脳の神経システムが刺激に反応しやすい

158: 繊細さんに必要なのは、「気にしない」という言葉ではなく、気づいたことにどう対処したらいいのかという、具体的な対処法なのです。

160: 繊細さんの特徴は「感じる力が強い」 という一言に集約されます。

202: 繊細さんに必要なのは、痛みやストレスに耐えられるよう自分を作り変えることではありません。 平気なフリをすることでもありません。

203: 繊細な感覚をコンパスに自分にとっていいもの・悪いものを見分け、自分に合う人間関係や職場環境に身をおく。 「私はこれが好き」「こうしたい」という 自分の本音をどれだけ大切にできるかが勝負どころ なのです。

317: そう気づいたら、「とりあえず」 を取り入れると、日々の仕事や生活がぐっとスピーディに進みます。

366: 自分の「こうしたい」という思いを大切にし、「こんなにわがままでいいのかな」と思うぐらい積極的に自分を優先して行く必要がある

403: 繊細さんが元気に生きるためには、この自動応答を切ることが必要です。気づいたときにわずかでも踏みとどまって「私はどうしたいんだっけ?」と自分に問いかけ、対応するかどうか、また対応するならその方法を、自分で「選ぶ」ことが必要なのです。

417: 「こうしたい」という本音をキャッチし、自分の本音を大切にすることで、繊細さんのつらさはどんどんラクになり、見違えるように元気になっていきます。

 

第2章 毎日のストレスを防ぐカンタンなワザ

560: 「思い切り楽しんだあと、動けなくなってしまう」という繊細さんに、私はよく「楽しい予定の後にも休日を入れてください」 とお話ししています。大変な仕事のあとに休みをとるのと同様に、「いい刺激を受けるイベントのあとにもあらかじめ休みを入れておく」のです。

651: 体を甘やかすと、どんどんストレス耐性が下がっていくような気がしたのです。

 

第3章 人間関係をラクにする技術

708: 「自分は他の人よりも繊細なようだ」となんとなく気づいていても、相手に、自分が当たり前に持つ感覚がどのくらい「ない」のかを、実感を持って認識している人はほとんどいません。

819: 「そうか、配慮が苦手なのか」

820:「こちらの状況に気づくことが、そもそも苦手なのか」  とわかると、相手の行動に振り回されることが減り、ぐっと付き合いやすくなります。

838: 実は「キライ」は生きていく上で大切なセンサー。「キライ」というのは「この人は、自分に不利益をもたらす気がする。嫌な予感がする」 ということでもあるのです。

846: 「キライ」を封じていると、依存されたり相手から過度に干渉、要求されたりと、かえって人間関係がこじれてしまうのです。

876: あたたかい人間関係を作るには、苦手な相手をきちんと嫌って遠ざけることが必要です。

895: 繊細さんたちとお話していると、 その「わかる」は、意外と外れている のです。

898: でも、わかるのは、怒っているな、イライラしているな、という相手の感情(機嫌) まで。「相手がなぜ今、その感情になっているのか?」という「感情の理由」を正確に当てることはできません。

920: 自分のせいではない可能性に目が向くようになるのです。

924: 「人といると疲れます。特にガツガツしたタイプの人と話すと、エネルギーを浴びてしまうというか、消耗してしまう」

932: ・テレビ画面の向こうの人が話している、とイメージする

        ・相手とのあいだに透明な壁をイメージする

955: ・自分と相手のあいだにモノを置く(ペンやグラスなどなんでもOK!)

        ・相手からできるだけ体を離す(椅子を後ろに引く、半歩下がる) 

982: 頼るための心得3つ  

心得1.まずは、「頼る」という発想を持とう

心得2.相手の状況を推測せず、言葉で確かめる

992: あれこれ想像するより「◯◯してほしいけど、どうかな?」と聞いてみるほうが断然確実で早いです。

997: 心得3.相手が引き受けてくれたら、信じて任せる

1013: 繊細さんにしてほしいのは、「ちょっとしたことを、軽く頼む」練習 です。

1032: 相手自身が「このままじゃ危ない」と自覚するよりもずっと早く、相手の危機に気づく のです。  気づくのが早いからこそ、助けるタイミングも早い。でも、 先回りして相手を助けることは、必ずしもいい結果をもたらしません。

1037: 自分から変わろうと思うためには、一度、底を打つ必要がある。何度も仕事で失敗したり、寝込んだりと、 ほとほと嫌になる経験をして初めて、「このやり方じゃダメだ! どうにかしなければ!」と思える のです。

1063: あなたが動くのは、相手にはっきり言葉で頼まれてから

1080: 言葉が伝わらない。そんな感覚を持つとき、伝わらないのは、自分の伝え方のせいでも相手に理解する気がないからでもなく、 ただ心の深さが違うのかもしれません。

1091: 「繊細さん仲間」を見つける方法

1108: 自分がいいなと思う場所には、似た感性の人が集まります。

1130: 「自分が好きなもの」「思ったこと」「感じたこと」をSNSで発信してみましょう。 

第4章 肩の力を抜いてのびのび働く技術

1299: 「一つひとつやっていこう!」で自分の得意技に持ち込む

1316: 重要なものをひとつだけ選ぶ こと。 すべてに順番をつけなくていいから、 絶対に今日やらなければならない大切な仕事を、ひとつだけ選びます。そして、やる。

1373: 気づいたことに半自動的に対応するのではなく、対応すべきものと放っておくものを自分で選ぶ必要があります。

1374: 「気づく」と「対応する」を分ける

1380: 2.対応するかどうかは、自分で選ぶ

1383: サクッと状況を伝えられるなら対応してもOK。もし、状況を同僚に確認し、言い回しや伝える順番を考えて、資料も添付して……と、 芋づる式にやったほうがいいことが出てきたら、いったん手を止める。

1388: 心身ともに健康に働くためには「対応すべきことを自分で選ぶ」「致命傷でなければ、対応せずに放っておく」 ことがとても大切なのです。

1476: 誰かの機嫌が悪いと気づいたら、「機嫌悪いんだなー」と思うにとどめ、あとは放っておいてください。

1514: 苦手を克服するよりも、得意を活かそう! 

第5章 繊細さんが自分を活かす技術

1654: 

人間関係

・相手の話を深く受け止めながら聞ける

・相手のニーズを感じとり、細やかにケアする

・相手のいいところを見つける

仕事

・他の人が気づかない小さな改善点に気づく

・リスクを察知する

・相手の動作を見て、いつの間にか自分もできるようになる

趣味など

・小さな仕掛けやこだわりに気づいて楽しめる

・日常の小さな嬉しさをキャッチする

 1712: 繊細さんは礼儀正しく良心的。困っている人を見たら手助けする、相手を思いやるなど、親切で優しい傾向があります。「この人は親切そうだ」とまわりの人もわかるのか、よく道を聞かれる、という繊細さんも多数。なかには「海外でも道を聞かれます」という方も。

1761: 繊細さんが、自分のままで元気に生きる鍵。それは、自分の本音――「こうしたい」という思いを、何よりも大切にすることです。

1764: 自分の「こうしたい」という思いを感じとり、一つひとつ叶えようと行動することで、「私はこれが好き」「こうしたい」と、自分の軸が太くなっていきます。

1767: 繊細さんは、自分の本音を大切にすることでたくましくなっていくのです。

おわりに

1877: 

自分のままで生きるとは、繊細さを含めて自分を肯定し、自分にとっての「嬉しい」「楽しい」「心地いい」「ワクワク」をコンパスに人や場所、物事を選ぶということです。