Rabbit or Duck?

Chronicles of My Ambiguous Life

読書メモ15

 

失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織

失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織

 

 

 

第1章 失敗のマネジメント

「失敗との向き合い方」がすべてを決める

人間が失敗から学んで進化を遂げるメカニズムを明らかにしていく。

航空業界と医療業界のミスに対する意識の違い:強い権限を持つ独立の調査機関が存在。失敗を「データの山」ととらえる。ブラックボックスの存在。ミスの報告を処罰しない。

医療業界:「完璧でないことは無能に等しい」=失敗は脅威、事故が起こった経緯について日常的なデータを収集してこなかった。

 

どんな業界で起こるミスも一定の「パターン」がある。

極度の集中により時間間隔を失う。

上下関係がコミュニケーションを阻害する(失敗時に部下が意見を言いにくい)

 

我々は自分の失敗には言い訳するくせに、人が間違いを犯すとすぐに責め立てる。⇒誰もが失敗を隠すようになる。

人は失敗を恐れるあまり、度々曖昧なゴールを設定する。たとえ達成できなくても誰にも非難されないからだ。

クローズド・ループ現象:失敗や血管にかかわる情報が放置されたりきょっかいされたりして、進歩につながらない現象や状態を指す。その逆が「オープン・ループ」。失敗が学習の機会や進化につながる。

疑似科学の世界では、失敗することが不可能な仕組みになっている。だからこそ、理論は完璧に見え、信奉者は虜になる。しかし、あらゆるものがあてはまるということは、何からも学べないことに等しい。

失敗に対してオープンで正直な文化があれば、組織全体が失敗から学べる。

 

専門的な能力はある程度練習で身につけることができる(1万時間ルール)。それが当てはまらない職種がある。例)心理療法士、大学入学審査員、企業の人事担当、臨床心理士⇒フィードバックがない。間違いを教えてくれるフィードバックがなければ、訓練や経験を何年積んでも何も向上しない。

 

第2章 人はウソを隠すのではなく信じ込む

・なぜ人が失敗から学ぶことが困難なのか。⇒失敗を認めようとしないのか。

認知的不協和:自分の信念と事実とかが矛盾している状態。

解決策は2つ

・信念が間違っていたと認める

・事実を否定して、都合のよい解釈をつける

「隠すことなんてない」と信じる人ほど、上手にミスを隠す。認知的不協和に陥っていることを気づくのは難しい。ミスの隠蔽を一番うまくやり遂げるのは、意図的に隠そうとする人たちではなく、「自分には隠すことなんて何もない」と無意識に信じている人たち。

 

経済学者を対象に行った調査:キャリアの途中で学派を変更した者、あるいは自身の心情を大きく変更した者は全体の10%未満。⇒自尊心が学びを妨げる、組織の上層部に行けば行くほど、失敗を認めなくなる。

 

我々は自分が「実際に見たこと」より「知っていること」に記憶を一致させる傾向がある。

第3章 「単純化の罠」から脱出せよ

進化は自然淘汰によって、「選択の繰り返し」によって起こる。

頭で考えたアイデアがどれほど秀逸でも、成功のためには実際の試行錯誤が欠かせない。

試行錯誤の結果として発明やイノベーションが生まれ、それがのちに論理化、体系化される。つまるところ、テクノロジーの進歩の裏には、論理的知識と実践的知識の両方の存在があって、それぞれが複雑に交差し合いながら前進を支えている。

 

我々は知らず知らずのうちに、目に見えるものを特定のパターンに当てはめて考え、そこにあとからもっともらしい解釈を付けて満足してしまう。=「講釈の誤り」

 

時間をかけて、バグのない優秀なソフトウェアの開発「トップダウン式」

完璧主義の誤解:ひたすら考え抜けば最適解を得られるという誤解、失敗への恐怖

 

陶芸クラスで、「量」で評価するチームと「質」で評価するチームとに分けて作品を提出させると、「量」のグループが粘土の扱いもうまくなっていった。

⇒「リーン・スタートアップ(Lean startup)」⇒小さく始める

最初から完成形を目指さず、フィードバックを得ることから始める。

早期の失敗を奨励する「フェイルファスト」手法⇒失敗型アプローチ

失敗型にアプローチには物事を素直に受け入れる気持ちと、根気強さが欠かせない。

RCT(Randomized Controlled Trial)の重要性。⇒統制群の必要性

 

第4章 難問はまず切り刻め

「小さな改善の積み重ね」(マージナル・ゲイン/merginal gain)

大きなプログラムを小さなプログラムに分けて検証

 

第5章 「犯人捜しの」バイアスとの闘い

非難は、人間の脳に潜む先入観によって物事を過度に単純化してしまう行為だ。非難は我々の学習能力を妨げるばかりでなく、深刻な結果をもたらす。失敗を隠す「内因」が認知的不協和だとしたら「外因」は非難というプレッシャー。

非難や懲罰には規律を正す効果あると感会えている人は多い。⇒実際は懲罰志向のチームの方が、そうでないチームよりミスの報告は少ないが、実際に犯したミスは多い(隠ぺいしている)

「クビ」は問題を解決しない

人の行動の原因を性格的な要因に求め、状況的な要因を軽視する傾向がある。⇒根本的な帰属の誤り(Fundamental attribution error)ただし、自分のミスには出てこない。

公人に対する我々の姿勢ほど非難にあふれたものはない。特に政治家には手厳しい。⇒公人はミスに対する認知的不況を抱え、自己正当化や言い逃れを生み出す。

 

第6章 究極の成果をもたらすマインドセット

失敗は「してもいい」ではなく「欠かせない」

失敗から学ぶことを妨げる内的・外的な問題をどう乗り越えていくか。

「成長型マインドセット(growth mindset)」の重要性

成長マインドセット:知性も才能も努力によって伸びると感あげる。根気強く努力を続ければ、自分の資質をさらに高めて成長できると信じている⇔固定型マインドセット

成長型マインドセットの人は失敗への着目度が高く、学習効果との密接な相関関係がうかがえる。

彼らにとって、引き際を見極めてほかのことに挑戦するのも、やり抜くのもどちらも成長。

 

終章 失敗と人類の進化

 

ビジネスリーダーや教師ばかりでなく、我々も社会人として、また親として、失敗に対する考え方を変えていかなくてはならない。子どもたちの心に、失敗は恥ずかしいもので汚らわしいものでもなく、学習の支えになるものだと刻み付けなければならない。

「正解」を出した者だけを褒めていたら、完璧ばかりを求めていたら、「一度も失敗せずに成功を手に入れることができる」という間違った認識を植え付けかねない。

すべてを「失敗ありき」で設計せよ。

・データとフィードバックの収集

・学ぶ機会を小さい規模で作る(パイロット・スキーム)

・事前検死(pre-mortem):プロジェクトを実施する前に、失敗した状態を想定し、なぜうまくいかなかったかチームで検証する。